日米中3カ国語をしゃべる女優藤本ルナが、Netflixなどで配信中の米映画人気アクションシリーズ「山猫は眠らない10 レディデスの奪還」(オリバー・トンプソン監督)で主役グループ3人の1人に抜てきされている。連載第2回は、映画「トゥームレイダー」のアンジェリーナ・ジョリー(48)に憧れ、13歳で渡米。名門・北京電影学院に進んでグローバルに活躍するトリリンガル女優のこれまでに迫った。【小谷野俊哉】

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日本で生まれ、幼稚園の時に中国に渡った。小学1年で日本に戻って来た時は、中国語で話していたという。

「中国には、父の仕事の関係で行ってました。戻って来た時は、中国語がペラペラだったんですよ。日本語が、むしろしゃべれなくて。でも、小学校で日本語しかしゃべらなくて、それで中国語を忘れちゃったんです。覚えるのも早いけど、忘れるのも早かった年代といいますか。でも母は中国語で話しかけてくるので、それで聞き取りができたんです」

アンジェリーナ・ジョリーが主演した映画「トゥームレイダー」を見て、女優に憧れた。

「『トゥームレイダー』で、役者の魅力っていうのにハッとさせられた。私もこういう仕事がしたいと思って。とにかくアンジェリーナ・ジョリーの演技、その存在感に、あのアクション。キャラクターがすごいなと思って、こんなかっこいいことをやりたいと思ったのがきっかけです。それで、女優なら、やっぱりハリウッドに行かないと、と思って。アメリカに行きたいと親に言って、すぐにOKが出ました。13歳だったんですが、中国に住んだりする家族だったから、抵抗はあんまりなかったかもしれないです。1人で行ったんですが、親戚がいたので、そこに住ませていただきました」

現地では、英語で苦労したという。

「中国語から日本語を学んだ経験があったので、外国語は早いうちに学んだ方がいいっていう気持ちはあったんです。でも、ちょっとなめてて、アメリカに行って2週間もたったら、もうペラペラになるだろうと思ってたんですよ。そんなわけないって(笑い)。最初の1年間くらいは、全然しゃべれなくて。相手が何を言ってるのか、やっと大体分かるというようなレベルでした。それで、自分で中学3年分の英語の教科書を買いました。ドリルみたいになってるやつを毎日、少しずつやってました。それで1年たった頃くらいには、なんとか簡単な会話ができるように。でも日本の中学1年間で、基礎を学べたのは大きかったかもしれないですね」

高校からはニューヨークのラガーディア高に通った。ロバート・デ・ニーロ(80)やティモシー・シャラメ(28)が卒業生だ。

「芸術全般の高校で、演劇、ダンス、絵画、音楽、そんな感じ。英語は、もうしゃべれるようにはなってたんですけど、でもやっぱりネーティブではないので授業についていくのは大変でした。日本の高校でやるような内容を英語で学ぶっていう感じなので、なかなか難しいんですよね。単語が難しいのばかり出てくるので、そういうのを覚えながら内容も覚えないといけない。ちょっと、いっぱい、いっぱいでしたね」

10代で単身アメリカに渡って身に付けた英語。今ではそれがグローバルに活躍する武器になっている。

「いや、今でも発音矯正のクラスを受けます。役が決まったら確認作業といいますか、そういう意味合いもあって、発音矯正のコーチを雇います。それで、一緒に脚本を読みながら、ここのアクセントどうしようかなとか相談したりします」(続く)

◆藤本(ふじもと)ルナ 5月6日生まれ、東京都出身。13歳で女優を目指して渡米。ニューヨークのラガーディア高ダンス学科卒業後、中国の大学・北京電影学院入学。2020年に映画「モンスター・ハント 王の末裔」で女優デビュー。同年中国映画「「淬火」「恩仇結」で主演。21年、映画「昨日より赤く明日より青く-CINEMA FIGHTERS project-」、水のない海」「永遠の1分。」、22年「47RONIN ザ・ブレイド」など出演。公開中の映画「ハードボイルド・レシピ」では裏取引の運び屋を演じている。165センチ。