サザンオールスターズ桑田佳祐(52)が23日、沖縄・石垣市民会館でライブを行い、民放FMラジオ全53局で同時生中継された。全国のFM局が初めて1つになった歴史的プロジェクト。ラジオに深い愛着を持つ桑田の恩返しライブとなった。一斉に生中継された午後7時からの1時間は全国のFMラジオが桑田サウンドに染まったが、放送後もサービス精神あふれるステージになった。

 桑田は赤いアロハシャツ姿で南国ムード満点に登場。ライブ冒頭からシモネタありの絶叫も持ち味だが「今日は変なことを言っちゃいけませんね」。全国同時生中継に気を使いながらも「私を連れてきてくれたのはみなさんのおかげです」と深々と感謝した。

 桑田が「リスナーに空気感が伝わる場所」として会場に選んだ石垣島もすっかり歓迎ムードだった。空港には「おーりとーり(ようこそ)桑田佳祐」と歓迎する看板も掲げられた。舞台上で「うれしかったよー」と素直に喜んだ。

 ラジオへの愛着は今も昔も変わらず深い。音楽を手にいれるにはレコードを買うしかなかった青春時代。ラジオは唯一、気軽に新しい音楽に触れることができる場所だった。FEN(極東放送=現在のAFN)で流れるロックなどの洋楽をかじりつくように聴いた。現在は10年以上にわたってFMラジオ番組のパーソナリティーを務めている。幅広い年齢層にあらためて「ラジオ」をアピールする今回の企画に、「音楽を教えてくれたのはいつもラジオでした」の公言通り、快く参加を決めた。

 スペシャル感を演出するために、初めてアコースティック形式でサザンや桑田のソロ曲が中心のライブを企画。サザンの「チャコの海岸物語」や沖縄を描いた「神の島遙か国」、昨年発売したソロ曲「ダーリン」などを歌った。「真夏の果実」では、妻の原由子(51)をサプライズゲストとして招き、盛り上げた。

 生中継は11曲までだったが、ライブはさらに1時間以上続行。アンコールを含め20曲を歌った。アンコールでは前座を務めたBEGINも登場。「涙そうそう」を一緒に歌ったり、原も再度登場するなど盛りだくさんの内容になった。

 今年でデビュー30年を迎える。恩返しライブのつもりだったが「いいプレゼントをもらいました。みんなからたくさんエネルギーをもらいました」。節目の年を迎えても、斬新さと謙虚さを持ち続けている。【近藤由美子】