8日午後0時半ごろ、7人が死亡した通り魔事件が発生した秋葉原では現場目前の大型電気店が閉店するなど、対応に追われた。一方で、すぐ隣の店舗ではアイドルの水着撮影会が事件後も予定通り行われ、路上ではメイド喫茶の店員がチラシを配るなど、オタク文化の中心地は日常も保った。

 サブカルチャーの聖地・秋葉原を悲惨な事件が襲った。現場には悲鳴と怒号が飛び交い、パトカーや救急車のサイレンが鳴り響いた。日曜日の午後、秋葉原で最もにぎやかな歩行者天国の通りが緊迫感に包まれたが、通りに面したビルの中では、アイドルが笑顔を振りまいていた。

 加藤智大容疑者(25)がトラックで突っ込んだ交差点から約10メートルの場所にある、ソフマップ音楽CD館では、事件直後の午後1時からグラビアアイドル三咲舞花(26)のイベントが予定通り行われた。事件の影響で来場客は12人と少なかったが、三咲は「事件にはサイレンの音で気づきました。少し遅刻してたらと思うと、怖いです」と話した。来場者の中年男性は「ビルの手前で血を流して倒れている人、心臓マッサージをしている人たちを見掛けました。ちょっと遠回りしてビルに入りました」と、淡々と振り返った。

 事件発生当時、歌っていたのは昨年のNHK紅白歌合戦にも出場したアイドルグループAKB48。現場から50メートル先の本拠地の劇場で、正午からライブを行っていた。250人の観客も含めて、ライブ終了後まで事件を知らずに大盛況。午後3時半からの2回目の公演も「すぐに犯人が逮捕され、安全が確保できたので、予定通りに行いました」(関係者)。この日は3公演が行われたが、メンバーは事件について触れなかった。

 ソフマップ音楽CD館で、同5時から握手会を行った東大卒の女優楠城華子(28)は「皆さんたくましいというか、事件直後なのに、わんさか来てくれていることに驚きました。2度と起こらないように、ちゃんと各方面で対応して、傷ついた人たちのケアをしなくちゃいけません。でも、歩行者天国の廃止とかはしないでほしい。外国人も観光に来る、秋葉原という2つとない素晴らしい街を萎縮(いしゅく)させてはいけない」と力説した。オタク文化だけでなく、いろんなものを発信する秋葉原が大好きだという。

 日刊スポーツの取材では、秋葉原ではこの日予定された約20のアイドルイベントすべてが開催され、カメラを構えたファンを喜ばせた。