石原裕次郎さんの代表作を初めて舞台化した「黒部の太陽」(10月5~26日、大阪・梅田芸術劇場)の特殊舞台装置が17日、茨城・つくば熊谷組技術研究所で公開された。最大の難関だった大町トンネルの工事で高圧地下水が噴出する破砕帯の突破シーンを再現するため、ステージ上で実際に水を流してリアリティーを出す。「舞台の限界に挑む」を合言葉に総制作費1億円を投じ、映画に負けないスケール感を演出する。

 クライマックスを盛り上げる出水で放出する水の量は計40トン。舞台上に再現した高さ6メートル、幅12メートル、奥行き8メートルのトンネルセットに20台のポンプで毎分10トンの水を放出できる装置で約4分間、水を流し続けると、壇上は激しい水しぶきで濃霧に包まれた。

 一般的な舞台の豪雨シーンで使う量は平均2トン。破格の水量を舞台下のプールで循環させて激流を生む構造で、製作側によると、ここまで水を使った仕掛けは演劇界で過去最大級という。客席の前3列は飛び散る水対策として雨具を用意。臨場感あふれる観劇を提供する。

 舞台は黒部ダム建設に挑む男たちと、それを映画化する裕次郎さんらの実話を合わせた物語。この日は裕次郎さんと建築技師を演じる中村獅童(36)、三船敏郎さんとダム建設責任者を演じる神田正輝(57)が舞台装置を初めて目にした。獅童はぬれる足場の滑り具合を確かめながら「すごいっすね。歌舞伎でも水は使うけど、ここまで迫力のあるセットは想定外。これは演劇の挑戦と言っていいほど」と驚いた。神田も「流水音が激しくて役者のセリフが通らない。ある会社(石原プロ)がスケールと危険ばかり追求して芝居を考えてない証拠」と冗舌。目玉セットの出来を見て、成功を確信した様子だった。