「親亀の背中に子亀を乗せて~」などのギャグで人気だった元ナンセンストリオの前田隣(まえだ・りん)さん(本名・中沢永一郎=なかざわ・えいいちろう)が19日午後2時35分、肝硬変のため都内の病院で亡くなった。72歳だった。

 前田さんは8年前に肝臓がんを告知され、抗がん剤治療を受けながら舞台に立ち、2年前に肺にも転移した。「医者から『あと1年』と言われたけど、自分には舞台の興奮と、お客さんの笑い声が一番」と現役を続けたが、昨年3月に脳梗塞(こうそく)で倒れて入院した。昨年9月に一時退院したものの、1カ月ほどで再入院した。脳梗塞で体や言葉も不自由となったが、懸命にリハビリにも努め、弟子たちが企画した「留守番ライブ」に出演することを熱望していた。

 しかし、今月10日すぎには容体が悪化。この日、妻の紀子さん(44)や立川左談次、弟子たちにみとられて静かに息を引き取った。遺体は都内の自宅に戻り、この日夜には、みとった弟子たちらが前田さんの思い出を語り合った。紀子さんは「ほとんど会話ができなくて、何が最後の言葉なのかはわからないけど、『大好きな舞台を継承していってほしい』と言っていました」と語った。

 前田さんはコロムビアトップ・ライトの門下となって漫才で活躍した後、64年にナンセンストリオの一員となった。「親亀-」や「赤上げて!白下げて」の手旗ネタなどのギャグで人気者になった。解散後はピンで漫談などで活動し、昨年2月下席の浅草東洋館公演が最後の舞台となった。

 葬儀は近親者のみで行い、後日「しのぶ会」を開くという。

 [2009年2月20日8時8分

 紙面から]ソーシャルブックマーク