女優森光子(89)の主演舞台「放浪記」(5月5日~6月27日、東京・有楽町シアタークリエ)の中止が26日、発表された。健康診断で主治医から「4時間の舞台を2カ月間演じることは体に差し障る」とアドバイスを受け、東宝が中止を決めた。61年初演以来、2017回演じた森にとっても、苦渋の決断だった。東宝は「これからも上演する希望は残したい」と再演をあきらめていない。
涙の決断だった。森は、公演前に受ける19日の健康診断で主治医から「日常生活に心配はないが、4時間の舞台を2カ月演じることは体に差し障る。養生した方がいい」と忠告された。21日に制作の東宝、森の事務所、演出家が協議。その夜、マネジャーが自宅にいた森に中止決定を伝えたが、森は涙を浮かべながらも納得したという。
森は2月6日に帝劇「新春
人生革命」を終え「放浪記」の準備に入っていたが、実は公演を乗り切れるか悩んでいた。この日の中止発表会見で公表された手紙で森は「私の体を気遣ってくださる皆さまのご心配をいただく中、正直、心が揺れ動く毎日でもございました」「林芙美子という役の人物を2カ月間演じ続けることができるのだろうかとの不安もつのりました」などと打ち明けている。
体力を考慮して4時間の舞台を短縮する案も検討されたが、女優としての意地が許さなかった。「『放浪記』をこれまで以上に、いいえ、せめてこれまでのように演じることができなければ、お客さまはじめ大恩ある菊田一夫先生、三木のり平さんに申し訳が立ちません。途中で幕を下ろすようなことになれば、ご迷惑をおかけすることになります。毎日眠れないほどに悩みました」と苦渋の日々が続いたことを告白。その上で「役者にとりまして、舞台をお休みすることはこれにまさる苦しみはございません。毎日毎夜考え悩みましたが、自分自身決心しました。心からお詫びを申し上げます」と結んだ。
「放浪記」は中止となったが、森は女優業を続ける。雑誌の取材やテレビ出演の予定もあるという。会見した東宝の増田憲義専務(63)は「森さんは戦後すぐに結核で片方の肺を失い、1つの肺で演じてきた。悲嘆に暮れていると思うので、励ましの手紙を送ってほしい。森さんの体調を見ながら、できればまたやりたい」と森「放浪記」再演の余地を残しており、来年の帝劇開場100周年には「森さんの出る舞台を考えたい」と話した。中止に伴う代替公演はこれから検討するという。
[2010年2月27日8時23分
紙面から]ソーシャルブックマーク




