覚せい剤取締法違反(使用、所持)と麻薬取締法違反(所持)の罪に問われた、バンドJAYWALKのボーカル中村耕一被告(59)の初公判が28日、東京地裁で行われた。中村被告は「間違いありません」と起訴内容を認めた。公判では過去に大麻所持で懲役1年6月、執行猶予2年の判決を受けたことや薬物密売人の電話番号を隠ぺいしようとしたことも明らかになった。検察側は懲役2年を求刑。判決は5月12日に言い渡される。タレント矢野きよ実(48)も証人として出廷した。

 中村被告は、黒いスーツに、白いシャツのボタンを上までとめ、少し疲れた様子で、公判中は終始うつむき加減だった。検察側の冒頭陳述などによると、中村被告は大麻所持で、77年8月にも函館で懲役1年6月、執行猶予2年の判決を受けていたという。反省がなかったことに中村被告は「自分でも分かりませんが、スキがあった。魔が差した。考えが幼かった」と小声で語った。

 さらに今回の逮捕時には「メモに残してはまずい」と薬物密売人の携帯電話の番号を、覚えきれずにしょうゆせんべいに書いていたことも明らかにされた。警察官からの職務質問を受けた際には食べて証拠隠滅を図ったという。中村被告は「見つかってはまずいので食べてしまいました」と素直に認めた。

 違法薬物に手を出した理由は「興味の方が勝った。疲れが取れ、目が覚めると聞いたから」と説明。注射器が「嫌だった」とし、オブラートに包んで飲むようになったという。一方で「効果はほとんどなかったが、眠らなくともすむし、集中できた」と説明した。

 検察側からは芸能界に広がる薬物汚染も指摘された。中村被告は「なるべく(テレビを)見ないようにしていました」と語った。自分の部屋で1人で使用していれば表ざたにならないと安易に考えていたという。「ばれるのが怖くて部屋にこもるようになった」ともこぼした。

 中村被告はすべての起訴内容に「はい」と小声で認めた。さらに「関係者に多大な迷惑を掛け、反省しています。とても大きな罪。どのような刑罰も真摯(しんし)に受けようと思います」と、実刑も覚悟していることを示唆。長年の交際相手のタレント矢野きよ実ら家族には「父さんと呼んでくれる家族もいる。これからは僕が守っていく」と語った。矢野は両手で顔を覆い、涙を流した。

 中村被告は09年2月か3月ころから、都内で外国人から覚せい剤を購入。10年3月8日に東京・南青山に停車中の車の中で覚せい剤を飲んだ。翌9日には西麻布の路上に止めた車内で覚せい剤0・67グラム、練馬の自宅に別の覚せい剤約0・67グラムとコカイン約0・73グラムを所持していたとされる。

 [2010年4月29日9時50分

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