歌舞伎俳優市川海老蔵(33)の無期限謹慎が、思わぬ「お年玉」を生んだ。中止になった海老蔵の「初春花形歌舞伎」に代わり、来年1月「坂東玉三郎特別公演」(2~20日、東京・銀座のル・テアトル銀座)のチケットが即完売したことで、元日だけの「元旦特別追加公演」を行うことが20日、発表された。関西や地方では元日公演の例もあるが東京での元日の歌舞伎公演は、1946年(昭21)の初代中村吉右衛門らによる帝劇公演以来65年ぶりだ。

 劇場に穴があけば、制作する松竹に2億円以上の損害が見込まれる。この窮地に1月は休む予定だった玉三郎が「玉三郎特別公演」を快諾した。中村獅童も共演し「阿古屋」「女伊達」上演が決まったが、15日の会員先行発売で大半が売れ、16日の一般発売は開始1時間で完売。公演数は18回、約1万3000席と通常公演より少ないが、あらためて玉三郎人気をみせつけた。完売を知った玉三郎は「少しでも多くのお客様に見ていただきたい」と元日特別追加公演を提案した。

 歌舞伎の正月公演の初日は通常は1月2日。歌舞伎俳優の元日はあいさつ回りなどで忙しいが、あえてファンサービスを優先した。そんな玉三郎の心意気を受け、松竹側、劇場側も「元日出勤」を受け入れた。チケット発売は今日21日で、短時間での完売が必至だ。

 [2010年12月21日9時59分

 紙面から]ソーシャルブックマーク