大ベテラン女優の赤木春恵(87)が7、8月の東京・明治座「コロッケ特別公演」(7月5日~8月14日)を最後に舞台から引退することが7日、分かった。舞台歴は60年を超えるが「まだ余裕のある時に卒業したい」と舞台からの引退を決意した。ドラマなどの出演については「要請があれば、お話をうかがって決めたい」と意欲をみせている。

 熟慮した末の決断だった。「肉体的には不安はないの。来年で米寿ですが、年の割には元気だし、自分でも若いかなと思っています。でも、舞台の上に立って、皆さんにご迷惑をかけることが起こるかは誰も予測できない。だから、まだ余裕のある時、自信のある時に卒業した方がいいのかなと思っていました」。

 「卒業」の2文字を思い浮かべた時に、明治座から「コロッケ特別公演」の出演依頼があった。「そこで決心がつきました。コロッケさんの公演はこれまで4回出ていて、大好きだった。いい機会だし、コロッケさんの公演で卒業させていただこうと決めました」。

 同公演は1部「棟方志功物語」2部「コロッケ

 オンステージ」で、赤木は1部に出演する。コロッケふんする版画家志功が売れずに悩む場面で、幻想の中で志功を勇気づける老婦人役を演じる。「1場だけですが、しっかり演じたい」。すでにファンや知人には「舞台を卒業します。最後の舞台をどうかご観劇ください」と印刷した案内状を100通ほど送った。しかし、親友の女優森光子(91)には「心配をかけるから」と連絡していないという。

 赤木は40年に松竹ニューフェースとしてデビュー。ドラマでは日本のお母さん・おばあちゃん女優として人気が定着する一方、60年を超えるキャリアを持つ舞台でも、橋田寿賀子さん脚本「喜劇ああ離婚」主演をはじめ、森繁久弥「佐渡島他吉の生涯」、森光子「おもろい女」など数多くの名舞台に出演した。

 07年に乳がんが見つかり、左乳房の全摘出手術を受けた。「2カ月おきに検診し、先生から『転移はしていない。内臓は大丈夫』と言われています」。舞台は引退するが、ドラマなど映像への出演は意欲的。「要請があれば、お話をうかがって決めたい。自信があれば出るし、不安があればお断りします」と話した。