アイドルグループAKB48が今年の音楽界の頂点に立った。第53回日本レコード大賞が30日、東京・新国立劇場で発表され、AKB48の「フライングゲット」が大賞に輝いた。女性グループの大賞受賞は史上初の快挙。本命視されながら大賞を逃した昨年は、悔し涙を流した。大賞受賞を目標に掲げた今年は、うれし涙で喜びを分かち合った。総合プロデューサー秋元康氏(55)も目を潤ませた。グループのリーダー高橋みなみ(20)とセンターを務めた前田敦子(20)が、日刊スポーツだけに悲願達成までの秘話を明かした。

 高橋

 私の携帯電話の待ち受け画面は、1年前からずっと昨年のレコ大での集合写真でした。いつでも、あの悔しさを忘れないためにです。ついに、ついに私たちの夢をつかみました!!

 前田

 ずっとうれし泣きしたかった。総選挙の時もそうだけど、熱くなると、周囲の目もどうでもよくなるんです。顔がどんなにひどくても、思いの限りに泣きました。

 高橋

 本来は賞にこだわるグループじゃない。絶対取れる実力があるわけではないかもしれない。でも、どうしても、レコ大だけは取りたかった。理由は3つありました。1つは、2年前に秋元康先生のおまけ(特別枠)で、初出演させてもらった時、大賞のEXILEさんを見て、「レコ大こそが本当の意味で皆さんに認めてもらえる賞なんだ」と知ったことです。賞と程遠かった私たちには、自然と夢になっていきました。2つ目はファンです。握手会では「一緒にレコ大に挑戦してる気持ちでテレビを見ているから」と励まされました。私たちのファンは「AKBが頑張ってるから僕も私も!」と、自分たちの夢を重ね合わせて応援してくれる人たちが多いんです。だから、これだけ頑張れば、こうやって成果が出るんだよって示すことで、誰かの希望になれると強く思っていました。

 前田

 今年でダメなら、もうチャンスはない。今回が本当に勝負でした。昨年は席で、私とたかみなは、手をつないでいました。2人とも、お互いに震えているのが分かった。

 高橋

 発表の瞬間。「大賞はエ…」っていう「エ」の声までは、信じてました。結果はエグザイル(EXILE)。夢が目前までと思っていただけに、失望感はハンパなくて、楽屋に戻った瞬間、全メンバーが大声で号泣しました。

 前田

 ほかの大賞受賞者がいる間は涙をこらえ続け、楽屋に入ったとたんに気持ちがあふれ出た。今までで一番の悔し涙でした。誰も泣きやめられない中、たかみながまとめたのを覚えています。

 高橋

 我慢強いメンバーまで泣く姿に、「来年頑張るしかないって」って声を絞り出しました。総選挙が個人戦なら、レコ大は団体戦。みんなで1つの夢を追いかけてきました。このために1年間頑張ってきた側面も、正直ありました。青春をAKB48にささげている私たちにとって、レコ大は甲子園。アイドル活動の集大成として、頑張ってきた証しが欲しかったんです。最後の3つ目は、秋元先生。実は、これだけヒット曲がある先生も、レコード大賞だけはなかった。昨年も私たちのパフォーマンス後に会場から帰られてしまったんです。今年は絶対に帰らせない覚悟でした。やっと秋元先生に1つ、恩返しが果たせました。

 前田

 歴史に名を残せた。これで来年1年も、また頑張れます。

 高橋

 53年間の歴史で、女性アイドルグループの大賞受賞は史上初だそうです。今年は悔しさをバネに頑張ってきた。来年は責任感を背負って、頑張っていくことを、ここに誓わせて下さい。本当に皆さんのおかげです。応援ありがとうございました。

 ◆前田敦子(まえだ・あつこ)1991年(平3)7月10日、千葉県生まれ。05年10月にオープニングメンバーオーディションに合格。09年の総選挙で1位。11年総選挙で再び1位。愛称「あっちゃん」。161センチ。A型。

 ◆高橋(たかはし)みなみ

 1991年(平3)4月8日、東京都生まれ。05年10月にオープニングメンバーオーディションに合格。09年8月にチームAのキャプテン就任。愛称「たかみな」。148センチ。AB型。