俳優二谷英明(にたに・ひであき)さんが7日午後4時58分に肺炎のため東京・慶応病院で死去していたことが8日、分かった。81歳だった。二谷さんは56年にニューフェースとして日活に入社し、石原裕次郎、小林旭、宍戸錠らと日活映画の黄金期を支えた。テレビ朝日系の長寿ドラマ「特捜最前線」に警視正役で主演し、重厚な演技で高視聴率を獲得した。03年に脳梗塞を患い、芸能活動を控えていたが、1人娘で元女優の二谷友里恵さん(47)が社長を務める「家庭教師のトライ」のCMに最近まで過去映像で登場していた。

 関係者によると、二谷さんは昨年12月26日に健康診断を兼ね検査入院した。自力で病院に向かうなど元気だったが、入院後に容体が急変して7日に亡くなったという。妻で女優の白川由美(75)や長女の友里恵さんらのショックは大きく、この日は応対しなかった。都内の自宅には、悲報を聞いた関係者から供花が届けられたが、ひっそりとしていた。

 二谷さんは同志社大中退後、長崎放送に入社した。記者からアナウンサーとなり活躍した。2年後の56年に日活の第3期ニューフェースに応募して、映画界入りした。タフガイの石原裕次郎、マイトガイの小林旭、エースのジョーの宍戸錠らとともに、ダンプガイの二谷として日活アクション路線をけん引した。「ろくでなし野郎」「影なき声」など数々の作品に主演した。不良っぽい役柄が多い裕次郎や小林旭らとは違い、二谷さんは知的で紳士的な二枚目役が板についていた。「青い山脈」「あゝひめゆりの塔」などの別路線の作品にも欠かせない存在だった。「黒部の太陽」「戦争と人間」など大作も含め150本近い映画に出演した。

 40歳を超えた71年に日活を退社し、ドラマはもちろん、テレビの司会業にも進出した。ロマンスグレーの渋い役どころが多くなると「40過ぎたら、男はみかけより中身が大事。年をとるのは自然なことで仕方ありませんが、自分でもう年だと思い込むことは絶対にしない。どんな役が来ても、できる態勢でいるのが役者というもの」と話した。

 テレビ朝日系で77年から10年間509回放送された刑事ドラマ「特捜最前線」では、神代恭介警視正を好演。30%近い視聴率を挙げる回もあった。

 日本俳優連合の要職も務め、83年の段階で「有線テレビやペイ・テレビなどニュー・メディア時代を迎えたら、我々の立場がどうなるのか、真剣に考える時期に来ている」と語り、俳優やスタッフの地位向上にも尽力した。生涯教育の私立学校を設立し、カンボジアの難民救済などボランティア活動も積極的に行った。その姿勢は「家庭教師のトライ」で知られるトライグループの社長で、元女優で1人娘の友里恵さんに引き継がれた。98年に友里恵さんが歌手の郷ひろみ(56)と離婚した際には、ワイドショーなどで父親の心情を吐露して話題となった。

 03年に脳梗塞で倒れ、静養を続けていたが、「特捜最前線」の映像をコミカルに吹き替えた「家庭教師のトライ」のCMに登場しており、ファンにとっても突然の訃報となった。

 ◆二谷英明(にたに・ひであき)本名同じ。1930年(昭5)1月28日、京都府舞鶴市生まれ。同志社大文学部英文科中退。56年に「沖縄の民」で映画俳優デビューした。64年2月に東宝の女優だった白川由美と結婚。同年11月に長女友里恵さんが誕生。NHK大河ドラマやTBS系の東芝日曜劇場などさまざまなドラマに出演。77年末に「特捜最前線」の北海道ロケで首を骨折し4カ月休養後に復帰した。80年、日本テレビ系「TV・EYES」でキャスターも務めた。87年公開の「ドン松五郎の大冒険」で映画初プロデュース。趣味はスキューバダイビング。血液型B。