<連載「気になリスト」(49)>

 見た目はブラジル人だが、心と名前としゃべりは日本人の植野行雄(30)、そんな濃いキャラの相方をいじる松下宣夫(28)の個性派お笑いコンビ、デニスが勢いづいてきた。植野のブラジル顔が原因で巻き込まれた仰天エピソードが受け、2009年(平21)6月のコンビ結成からわずか約3年半で、人気番組のレギュラーもゲットした。

 父がブラジル人で母が日本人の植野は、少年期からネタに事欠かなかった。

 「サッカーめちゃくちゃ下手なのに、父がブラジル人というだけでサッカーの試合に出させられ、マークが3人ついた」「1回もケンカしてないのに中学校で番長になり、地元の武闘派暴走族からスカウトされた。迷彩柄パンツで参加したら、地元で『ついに軍人が入った』とウワサになった」「友達5人で居酒屋に行ったら、僕だけポップコーンの突き出しが出た」

 「怪しい外国人」と誤解されることも多く、庭でガーデニングをしていただけで、違法植物と勘違いされ警察が来た。東京・西麻布で夜、職務質問を受けた時、リュックの底に落ちていたアーモンドチョコを警察官が拳銃の実弾と間違え、逮捕寸前の大騒ぎになった。渋谷でイラン人が3対2でケンカしていた時、やじ馬として見ていたら、仲間と思われ片側の勢力に加えられた。

 「僕のあだ名は中1で『アラブ』、中2で『ケバブ』、中3では『実行犯』でした」

 松下はもともと芸人志望だったが、植野は20歳の時、家族が突然大阪からサンパウロへ引っ越してしまったのを契機に上京し、芸人の道に足を踏み入れた。松下は「ちなみに僕は父母とも香川県の人で、単なる普通の日本人です」とひょうひょうと話す。2人のギャップも面白い。

 そんな2人が“便乗”を狙うのが、来年のサッカーW杯ブラジル大会と16年リオデジャネイロ五輪。もっとも、植野は「いや、実は(ブラジルの公用語)ポルトガル語をしゃべれないので…」。思わず、「どんだけ日本人なんだ!」と突っ込んでしまったが、2人はさらなるブレークをもくろみ、ポルトガル語習得を急いでいる。【広部玄】

 ◆デニス

 植野行雄(うえの・ゆきお、82年7月17日、大阪府生まれ)松下宣夫(まつした・のぶお、84年5月28日、徳島県生まれ)。09年NSC(吉本興業の芸人養成学院)東京校に入学し、同期でコンビ結成。昨年11月からフジテレビ系「笑っていいとも!

 増刊号」レギュラー。テレビ東京系「バカソウル」などに出演。コンビ名は植野の父の名字。吉本若手芸人の劇場、渋谷のヨシモト∞ホールに出演中。詳細は同ホールのホームページ参照。(1月25日付

 紙面から)