SMAP稲垣吾郎(39)が、国民的ドラマの映画版「おしん」(冨樫森監督、10月12日公開)の主人公おしんの父親、作造を演じることが26日、分かった。おしんを激しく叱り、上戸彩(27)演じる妻にきつく当たるシーンも盛り込まれる。エリートやクールな役柄が多かったが、貧しい家庭の父親を体当たりで演じている。

 ボロボロの着物をまとい、短髪に無精ひげ。氷点下10度の寒さで鼻が赤くなりながらも、稲垣は胸を張った。「これまではエリートやシティーボーイを演じることが多かったけど、(演じる)作造は真逆の設定。無精ひげ、日焼けメーク、初めての方言、貧しい設定など、すべてが初めてのチャレンジです。新しい僕が満載ですよ」。稲垣自身、劇中衣装を着用した自分の姿を鏡で見て「うわー、レア!」と驚いた。

 髪を短くし、無精ひげを生やしたのは、稲垣の提案だった。「僕の髪は長くて前髪があって、くるんとはねているイメージがすごくあると思うので、ガラッとビジュアルを変えた方が作品の世界に引き込むことができるので」。他の仕事もあるため、劇中ではカツラを使用。大幅なイメージチェンジで「俳優としてのうまさに加え、意外性で観客を引き込みたい」という制作側の狙いに応えた。

 平均視聴率52・6%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を記録したNHK連続テレビ小説「おしん」放送時(1983年4月~84年3月)は、小学4年だった。「何となく覚えています。『おしんがこれだけ頑張っているんだから、あなたも頑張りなさい』と両親から怒られるネタに使われていました」。おしんの父親役は伊東四朗で、伊東の自宅に「おしんに厳しくしないで」と手紙が送られたエピソードが有名だが、映画版でも稲垣が厳しい父親を演じる。

 上戸演じる妻を突き飛ばし、奉公先から勝手に戻ったおしんの頬をたたく。「リアルに父親の経験がないので演じる時に悩むのですが、イメージを膨らませていくしかない」。監督がおしん役の浜田ここね(9)に接する姿をヒントにするなど、苦労しながらも厳しい父親像を作り上げた。

 撮影は山形県内で行われ、先月末に終了。「時代ものの経験が少なく、あってもお殿様みたいな役が多かったので、作造のような役もピッタリハマるような俳優になりたいので、今回はいい勉強だなと思いました」。まさに新境地開拓に、手応えを口にした。