小惑星探査機の帰還とかかわった人々を描いた映画「はやぶさ/HAYABUSA」(堤幸彦監督、10月1日公開)が、宇宙で試写されることが1日、分かった。劇場公開前の映画が宇宙で上映されるのは史上初で、現在、国際宇宙ステーション(ISS)に滞在中の宇宙飛行士、古川聡さん(47)が観賞する予定。

 宇宙試写会の実現に、堤幸彦監督は「宇宙空間で私たちの作品を見ていただけるとは、子供のころの夢が現実になった気分です」と大喜びだ。

 試写会のきっかけは、ISSの日本実験棟きぼうでさまざまな実験をしている古川さんにエールを送りたいという映画関係者の思いからだった。しかし、古川さんはすでに6月8日にロシアのソユーズ宇宙船で飛び立っており、現在は地球上空400キロにいる。そこで、衛星間通信システムと呼ばれるデータ通信システムで、映像を送信するという方法をとることになった。送受信データには制限があり、映画も現在編集作業中のため、完成した部分のみの上映になる。

 宇宙に長期滞在する宇宙飛行士は、娯楽用にDVDなどを持って行く例もあるが、劇場公開前の作品を宇宙で上映するのは、世界でも初めて。試写会は今月下旬を予定し、映画を見た感想も古川さんから送られてくる。

 きぼうの船内実験室での上映になるため、映画見るのは古川さんだけ。さらにパソコンを壁面に固定しての上映という小規模の上映だが、スケールは壮大だ。米航空宇宙局(NASA)の宇宙飛行士が協力し、映画を見る古川さんの様子を映像に収め、宇宙航空研究開発機構(宇宙機構=JAXA)の筑波宇宙センターに送ってくれることになった。

 同作は、竹内結子、西田敏行が出演しており、竹内はJAXAスタッフを、西田ははやぶさプロジェクトにかかわった実在の人物を演じた。【小林千穂】