童話作家宮沢賢治の名作「グスコーブドリの伝記」がアニメ映画化され、来年夏に全国公開されることが3日、分かった。

 原作は、1920年代、冷害にみまわれた東北の森を舞台に、厳しい自然と向き合う青年の姿を描いている。賢治の実体験が強く反映された晩年発表の傑作として知られている。製作側は映画化にあたり、東日本大震災による被災で危機に直面し、復興の過程にある日本人に向けたメッセージも込めるという。原作は、賢治の没後60年となった93年にアニメ映画として製作され、翌94年に公開されたことがあり、以来2度目のアニメ映画化となる。

 映画は、同じ賢治の名作「銀河鉄道の夜」を85年にアニメ映画化した杉井ギサブロー監督が手掛ける。「銀河鉄道の夜」で、登場人物を擬人化したネコとして描いて注目された。杉井監督は、今回も同様の手法で映画化する。賢治の作品に深い理解を示している杉井監督は「私たちの現在という時代が直面している環境問題とも、ある種の重なりを感じる」と映画化の必要性を説明した。現在、来年3月の完成に向けて、製作作業を進めており、「今の時代の物語世界として、原作をスケールアップした形で演出したい」と意気込みを語っている。

 配給するワーナー・ブラザース映画では、被災地との結びつきを考えたさまざまなアイデアを検討している。賢治の思いが時代を超え、困難に立ち向かっている人々に届けられそうだ。

 ◆映画「グスコーブドリの伝記」

 宮沢賢治が1932年(昭7)に雑誌「児童文学」で発表した童話を映画化。岩手の理想郷イーハトーブの森で生まれた主人公グスコーブドリは、冷害による飢饉(ききん)で両親を失う。食べていくだけで精いっぱいの生活を送る中、両親の教えや、就職先などで学んだことを深く考えながら、試練を与え続ける自然と向き合い、試練の意味を理解していく。