<日刊スポーツ映画大賞:助演男優賞・リリー・フランキー(そして父になる、凶悪)>◇28日◇ホテルニューオータニ

 「そして父になる」「凶悪」で見せた自然体の演技を絶賛され、助演男優賞を受賞したリリー・フランキー(50)は、ステージ上でも自然体だった。開始10分前に会場に飛び込み、二日酔いも隠さず、爆笑スピーチで盛り上げた。それでも芝居をすることの喜びや、映画に参加できる誇りを語り、2年連続の受賞も「目指したい」ときっぱり語った。

 タキシード姿のリリーは、会場に到着すると「二日酔いで…」とげんなりした表情を見せた。その理由はスピーチで明かされた。前夜、知り合いのAV女優とその夫が訪ねて来たのだという。夫婦が結婚1年で夜の生活がなくなったという相談を朝まで聞いていたため、深酒になってしまったとした。

 「こんな栄えある賞。2度となかろうと思って、昨日は深酒せず、早く寝ようと思っていた」と弁明したが本当かどうかは不明だ。また、ステージには、艶話を聞くには幼い、子役の黄升炫(ふぁん・しょうげん=8)がいた。「そして―」で息子を演じた黄に、リリーは「耳ないないしなさい」と耳をふさぐよう指示。映画のような自然体で、会場をなごませ笑わせた。

 役者と言われることには抵抗があった。これまでは「役者とも思っていないし、監督たちもそう思っていないと思う」と言い続けてきたが、「ぐるりのこと」(08年)でブルーリボン賞新人賞を受賞して以降、オファーは絶えない。「(映画出演は)アルバイトだとか言ってましたけど、これで言いづらくなりましたね。初めて演技を評価してもらったように思います。これからは、照れずに映画に出ていることを言っていこうと思います。映画に参加するということに誇りを感じます」と、今回の受賞で気を引き締めた。

 今後への思いも少し変わってきた。「『積極的に役者をやるつもりはない』というのはあまり変わってませんが、是枝監督や白石監督がまた何かを撮る時には一緒にやってみたい。来年も(受賞を)目指したいと思います。選ばれなくても、この会を見られるのが楽しみ」と話した。

 東映の岡田裕介社長が祝辞のあいさつで「フランキーと言えば、我々の時代ではフランキー堺だった」と話したが、リリーは「リリーと言えばフランキーだね、と言われるように頑張ります」と笑わせ、活躍を誓った。【小林千穂】

 ◆リリー・フランキー

 本名・中川雅也。1963年(昭38)11月4日、福岡県生まれ。武蔵野美術大学卒業。20代のころからイラストレーター、文筆業、映像制作、バンド、ラジオなどで活躍。05年に出版した小説「東京タワー

 ~オカンとボクと、時々、オトン~」(扶桑社)は映画、ドラマ、舞台になった。初出演映画は04年「盲獣 VS 一寸法師」。ほかに「色即ぜねれいしょん」「モテキ」など。血液型B。

  ◆「そして父になる」

 人生の勝ち組と思って生きてきた野々宮良多(福山)は、息子慶多(二宮慶多)が小学校に合格後、妻みどり(尾野真千子)が出産した病院から、子どもを取り違えた可能性があると指摘される。検査の結果、慶多は息子でないと判明。斎木雄大(リリー・フランキー)ゆかり(真木よう子)夫妻と、本当の息子琉晴(黄升炫)を交えて話し合う中、良多は血か、愛した時間かで思い悩む。

 ◆「凶悪」

 獄中の死刑囚(ピエール滝)の告白を受け、身の毛もよだつ殺人事件の真相を追う雑誌記者(山田孝之)の姿を描く。告白の内容は、自分の余罪を明かした上で、仲間内で先生と呼ばれていた男(リリー・フランキー)が全ての事件の首謀者だと告発する衝撃的なものだった。金のために殺人を重ねた事件について取材を進めていくうちに、使命感と狂気の間で揺れ動くようになってしまう。