大腸腺腫という良性のポリープは全てがん化するわけではありませんが、がん化の可能性があるので切除します。

 早期の大腸がんは粘膜といって大腸の壁の一番浅いところにあるので、おなかを切らずに内視鏡で切除することができます。内視鏡で治療できるかどうかは、がんがどの深さまで入り込んでいるかで決まります。浅いところにしかないがんは内視鏡で治療できます。

 一口に内視鏡治療といっても種類がたくさんあります。大腸カメラの先端から道具を出してポリープを切除することに変わりはありませんが、時間や偶発症の率つまり危険性に違いがあります。大ざっぱに説明すると、治療法はポリープの大きさや形を見て決めています。

 <1>鉗子(かんし)切除(生検検査)

 2~3ミリ程度の小さなポリープは生検鉗子という道具で切除します。生検検査は、顕微鏡の検査に病変の一部を出すことが本来の目的ですが、小さな病変はこの検査で切除できてしまいます。

 <2>コールドスネアポリペクトミー

 5~10ミリ程度の病変は、金属製の輪っか(スネア)を用いてポリープをつかみ切除する方法です。通電せずに直接輪っかで切り取る方法で、時間も短く治療を行うことができます。英語でtomy(トミー)が付くと切除で、ポリペクトミーはポリープ切除術になります。コールドは通電しないという意味です。

 <3>ポリペクトミー・EMR(内視鏡的粘膜切除)

 5~20ミリ程度までの病変はやや大きく、一部がんを含む可能性が出てきます。ポリープの周囲に目に見えない腫瘍の細胞が残らないように通電し、粘膜を焦がしながら切除することで再発を予防します。

 <4>ESD(内視鏡的粘膜下層剥離)

 00年代に入り健康保険が適用になった治療法です。スネアでは取り切れない平らで大きな腫瘍を切除する方法です。病変の周囲をペンでなぞるように切開することで、取りたい病変の形に合わせて切除が行えます。

 ◆池谷敬(いけや・たかし) 1981年(昭56)9月21日、静岡県出身。浜松医科大卒。2012年から東京・中央区の聖路加国際病院勤務。内視鏡で粘膜下層を剥離するESDという手法で、大腸がんに挑んでいる。