築地市場の移転先となる豊洲市場の地下水モニタリング調査で、最大で環境基準の79倍となるベンゼンが検出されたことが判明してから週が明けた16日、築地市場は重い空気に包まれた。

 移転慎重派の仲卸「山治」の山崎康弘さんは「これ以上、消費者を裏切れない。市場で働く人間として気持ちは完全に離れた」と話す。セリ場で仲卸同士、顔を合わせると、「賛成派、推進派の人たちも『ダメだな』『もう行けないよな』と言っていた」という。

 推進派の衝撃は大きい。元東京魚市場卸協同組合(東卸)理事長で移転を推進してきた仲卸「美濃桂」の伊藤宏之さんは「予期しなかった数字。何で急にこんなに数値が変わるのか。推進してきた人間としてはその解明が先」としながらも「都はこれまでウソの報告をしていたのか、本当に知らなかったのか」と都への不信感をのぞかせる。「豊洲でいこうという世論をようやく作り上げたのに、またバラバラになった。世論を作り直すのは大変です」。今回の調査結果を深刻に受け止めた。

 慎重派、反対派は築地を再整備する以外にないと思い定めている。しかし、伊藤さんは「現場の再整備は無理です。築地でできないことを知らない人たちが『築地でやる』と言っている」と話す。関連事業者団体連合会の藤井玉喜会長も「五輪もあるし、10年、15年じゃ終わらないでしょう」と、築地再整備には否定的だ。「極まっちゃいました。八方塞がりです」。

 今月30日に東卸の理事選、翌31日に理事長選が行われ、仲卸業者のトップが決まる。移転に前向きか慎重か。豊洲か築地か。モニタリング結果を受けた仲卸業者の総意が示される。【中嶋文明】