政府は24日、北海道、埼玉、千葉、東京、神奈川の5都道県で継続している新型コロナウイルスによる緊急事態宣言を25日に全面解除する方針を固めた。首都圏よりも先に宣言が解除された大阪、京都、兵庫の近畿3府県は24日、解除後初の日曜日を迎えた。

訪日客が消え、府県境を越えた「観光お断り」の京都では、土産店の店主が「府県をまたいだお客が来ないと、店がもたない」と嘆いた。

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観光名所・清水寺(京都市東山区)の参道の一角「三年坂」では、臨時休業する土産物店が目立つ。21日に宣言が解除されたが、かつてのにぎわいにはほど遠い。三年坂で江戸時代から続く瓢■(ひょうたん)店の7代目店主、大井秀民さん(67)は「これだけ人がいない状況は生まれて初めて。(京都市の)門川市長には1回、この周辺を歩いてほしい」と声を荒らげた。

21日の宣言解除を受け、門川大作市長(69)は「市民が市内で文化を楽しみ、経済を回していく時期で、府外から観光に来てもらうのはまだ先」と府外からの「観光お断り」を“宣言”した。大井さんは「京都市内を“散歩”する京都の人がお土産のひょうたんを買ったりはしない。海外からのお客さんは当分、先になる。いまは府県をまたいだお客さんが来なければ、店がもたない」と嘆息した。 有数の観光地を抱える京都には年間約8500万人の観光客が訪れる。京都市の調査では、18年に日本人を含む観光客が市内で支払った宿泊代や飲食費などの「観光消費額」は約1兆3000億円。コロナ禍で訪日客は激減し、ゲストハウスは次々と廃業している。 妻と2人で清水寺を訪れた京都市内の男性(60)は「参道をこれだけのんびり歩けることは普段ではありえない」と話し、「京都は観光あっての都市。このままでは京都の経済が危ない」と心配した。観光名所・嵐山の人気スポット「竹林の小径」も人影はまばら。京都の観光産業を下支えするタクシー業界。JR京都駅前で客待ちをしていたタクシー運転手(62)は「きょうは2時間半待ち。客がいない」とつぶやいた。【松浦隆司】

※■は竹カンムリに單