米グアムで巨人阿部、小林の合同自主トレに密着した。「野球談議=野球の勉強」だけではないと実感した。

 朝食は何時からか、昼食のメニューは、シャワーの順番は、休日の予定は…、共同生活には“教材”がつまっていた。

 駆け出しの料理人はフライパンを磨くところから修行が始まると耳にしたことがある。野球人も同じだと感じた。野球のアドバイスを聞けることが当たり前ではない。阿部は自主トレ前に「気配り、目配り、思いやり」を後輩の小林に課した。

 4日に日本を出発してから20日に帰国するまでの間、小林は一時も気を抜く時間はなかったはずだ。肉体的な疲労だけでなく、気疲れもあっただろう。ただ、日に日に表情は明るくなってきた。声のトーンが上がり、動きも機敏になっていった。本人は「そうですか?」と言うが周囲から見れば明らかだった。

 扇の要に座る捕手。投手を含め野手8人と常に対面する重要なポジションだ。一朝一夕で全てを変えることはできない。少しずつの積み重ねが小林を偉大な捕手へと成長させる。だから、阿部が自身の経験を無理に詰め込んで伝えるようなことはしなかった。「そんな簡単じゃない」。長らく巨人の正捕手を張った阿部がじっくりと後輩を見守り続ける。【巨人担当・為田聡史】