熟練のタクトがさえる。楽天は梨田昌孝監督(63)が大胆な打線の組み替えを敢行し、西武に楽勝した。開幕ダッシュを支えたペゲーロ、ウィーラー、アマダーの助っ人上位打線をあっさりと解体。左打者を7人並べるオーダーで両リーグ最多の20安打を連ねた。「今日を勝つための最善」という現実だけを追い、固定観念にとらわれない用兵、戦術が際立つ。貯金12、首位堅持だ。

 5月上旬の首位に興味はなかった。メットライフドーム名物の長い階段を下りながら梨田監督は言った。「シーズンは長い。今いいからって…。ルーキーの活躍はみんなの刺激になるけど」。ベンチに腰掛け、また言った。「1年間は長い。いい時ばかり続かない。人生も。悪い方が出たとき、どうやりくりするか」。西武菊池らに3安打に封じられた一夜明け。負の兆しを見逃さず、1勝を積むため手を打った。「今日は並びが変わる。楽しみにしていて下さい」と笑った。

 看板の「2番から助っ人3枚」を崩した。「アマダーがつまずいている。まだ慌てる時期じゃない。体をキレを戻してくれないと」。3番に島内を挟んだ。一方で、腰の不安があり前日途中交代していたペゲーロは「考慮して、DHで」2番に据えた。同じく左かかと痛で欠場していた茂木は「自分からは一切痛いと言わない、頑固な男。今日は大丈夫」と1番に戻し、攻撃力の低下を防いだ。さらに相手先発の野上を意識し、左を7人連ねてみせた。