トリの勇姿が奇跡を起こす! 阪神矢野燿大監督(50)が27日、鳥谷敬内野手(38)を逆転CS進出のキーマンに挙げた。鳥谷本人の発言から去就が注目されるベテランについて、その活躍が「ムードが良くなる1つの材料」と期待を込めた。チームは逆転CSへ正念場の戦いが続く。05年優勝の味も知り、調子も上げてきた背番号1の力が、今こそ必要と熱く訴えた。

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信頼は不変だ。シーズンも残り24試合。上位3球団を猛追する虎にとってカギになる男とは…。中日戦の雨天中止を受け、矢野監督は勝負どころを知る鳥谷の存在に期待した。

矢野監督 もちろんファンの人も(活躍を)望んでいると思う。練習だって、いつ見ても抜くこともない。自分の今やれることを常にやってくれている。もちろんトリも頑張ってもらわないと困る。それこそ(チームの)ムードがさらに良くなる1つの材料として、トリの頑張りがある。

鳥谷の存在が一際クローズアップされたのは、25日のヤクルト戦後だった。今季最後の神宮でのプレーを問われ「自分もこれが最後(の神宮)になるかもしれないので、いい打席だったと思います」と意味深なコメントを残した。今年が5年契約最終年。発言を受け、26日に谷本球団副社長が「しかるべきタイミングで」と近日中に去就会談の場を設ける考えを示唆した。

今季の先発出場はわずか8試合。代打中心で55試合に出場し、打率2割1分1厘、打点はゼロだ。ただ、球団最多2082本のヒットを積み上げた男の存在感は抜群。真摯に野球と向き合い背中で後輩たちを引っ張っている。特に8月に入ってから9打数4安打、打率4割4分4厘と調子も上向き。指揮官の期待はますます高まっている。

矢野監督 練習を見ていてもずっといい形で振れている。一昨日の一塁まで走る姿(遊撃内野安打を)見てもトリらしい動きが出来ている。まあ、そういうレベルはむちゃくちゃ高い。そこは任せてるんで。あとはトリ自身の今持ってる力を出してくれることが、こっちのためにもなる。

雨のため、屋内で行われた練習。背番号1はいつもと変わらず、黙々と練習に打ち込んだ。その後、26日ぶりに帰ってきた甲子園の中日戦は中止となったが、逆転CSへ負けられない戦いが続くことに変わりはない。今後、鳥谷が打席に立てば大きな拍手と歓声が起こることは間違いない。そこでチームに勇気を与える一撃を重ねれば…。逆転CSを目指す虎に大きなうねりが生まれる。【桝井聡】

◆矢野監督と鳥谷 ともに05年岡田阪神の優勝メンバー。昨オフ就任した矢野監督は鳥谷のポジションについて「本人に聞く」とし、10月23日の秋季練習初日に面談した。鳥谷は「もう1回ショートで練習をさせてもらって、判断してくだされば」と遊撃再挑戦を直訴。指揮官は「誰もできないことをやってきた」と実績や経験を尊重しつつ、「与える立場ではない」とキャンプから北條や新人木浪らと競わせた。鳥谷は木浪に敗れ、16年目で初めて開幕スタメンを外れて控えが増えた。だがスタメン時と変わらない貪欲なスタイルでチームを鼓舞。矢野監督は打点0でも2軍に落とさず、代打の切り札や精神的支柱として期待は大きい。