<楽天9-4西武>◇30日◇盛岡

 じぇじぇじぇじぇじぇ!

 もう、どうにも止まらない。首位楽天が西武との点の取り合いを制した。先発則本が5回までに4失点したが、打線が敵失に付け込み西武先発の菊池を4回4得点で引きずり降ろした。同点の5回に再び敵失で勝ち越すと、7回にとどめの4点を奪い、NHK朝の連続テレビ小説「あまちゃん」の舞台の岩手で快勝。4連勝で今季最多の貯金を16に伸ばし、2位西武とのゲーム差も今季最多の5。悲願の初優勝へ、突っ走るじぇ!

 楽天の勢いを象徴する攻撃だった。5-4で迎えた7回だ。西武藤原から2四死球を奪い、1死一、三塁。枡田が左中間二塁打を放った。三塁走者の銀次に続き、一塁走者ジョーンズも巨体を揺らした。足から滑り込んで生還。主砲の激走に、盛岡が沸いた。本当の強さが表れたのは、直後だった。捕手炭谷が球審にタッチをアピールする。視線が二塁から離れた。その隙をついて、枡田はスルスルと走りだした。楽々、三塁到達。気落ちした藤原から続く松井が右翼へ2ランを放ち、とどめを刺した。あっという間の4得点だった。

 先発則本が3点リードを守れず、5回に1度は追いつかれた。だが、終わってみれば5点差の快勝。星野仙一監督(66)は、枡田の走塁には「大きい!

 隙が見えたら一目散にいかないとね」と表情を崩した。就任以来、口酸っぱく言ってきたことが、確実にできるようになってきた。

 岩手のファンは「じぇじぇじぇ!」と驚くようなプレーも、枡田にしてみれば当然だった。「誰でもできるのでは。(意識は)浸透しています。1つでも先に」と言った。鈴木内野守備走塁コーチは「打線が固定されたことが大きい。出塁した時、打席の人が決まるから、打球傾向など想定しやすい」と指摘した。今季ここまで47通りの打順を組んだが、この日のオーダーは4試合連続同じで4連勝。特に、7月に入り6番に枡田が固定され、下位打線の得点力がアップした。

 打線が好走塁を呼び、好走塁が打線を助ける。相乗効果で勝利をつかみ、雰囲気も抜群だ。前日29日の決起集会。盛岡市内の焼き肉店で、星野監督が「ほんま、よう飲むわ」とあきれるほど、2時間半のうたげは盛り上がった。マギーが「ジョーンズ、日米通算2000安打、おめでとう!」と声を上げると、締めは小山伸。「このままの勢いで行きましょう!!」と呼び掛けた。あえて「優勝」の2文字は封印した。「まだ、そういう時期じゃない」。ただ、たとえ言葉にしなくても、みんな分かっている。戸村は「なんだか、感動的でした」と漏らした。

 5回には、松井の振り逃げが勝ち越しの敵失を呼んだ。ミスが続いた西武と対照的。星野監督は「変なミスは、ほとんどなくなった。だから流れが来る」と手応えを口にした。その2位西武を、5ゲーム差に離したことには「関係ない。貪欲に行く」と意に介さなかった。「優勝」と口にしなくても、目指すゴールは分かっている。選手と気持ちは同じだ。【古川真弥】

 ▼楽天が26日ロッテ戦から4試合連続逆転勝ち。楽天が4試合以上続けて逆転勝ちしたのは球団史上初めてだ。これで2位に今季最大の5ゲーム差。楽天は88試合目だが、星野監督が85試合を過ぎて2位に5ゲーム以上の差をつけたのは中日時代の88、99年、阪神時代の03年とあり、過去3度ともリーグ優勝している。

 ◆じぇ

 NHK朝の連続テレビ小説「あまちゃん」で頻繁に使われる言葉。ロケ地・岩手県久慈市小袖地区の方言で、驚いた時に使われるといわれる。