<J1:東京2-2磐田>◇第10節◇6日◇味スタ

 オレを忘れるな!!

 東京FW李忠成(27)が抱く、思いを乗せた矢がスタンド上段で見守る日本代表ザッケローニ監督に向かって飛んでいった。後半ロスタイムに劇的な同点弾を決めた直後、弓引きポーズのパフォーマンスからしっかりと放たれた。「オレもいることを忘れないようにと思って、弓を引きました」と、超ド派手アピール。その手応えは「思い出してくれたんじゃないかな」。それくらいの衝撃があった。

 磐田に2点先行された展開で、東京が反撃に出た。李は後半14分から出場。「何が何でも結果を残す」。ハートは燃えたぎっていた。28分のMF石川のゴールで追い風が吹く。イケイケムードは時間を追うごとに増し、ロスタイム4分が表示されても衰えない。残り1分少々で得た左CK。そのこぼれ球を拾ったDF太田のマイナス方向へのクロスを、左足で合わせた。

 限られた時間の中で見せたゴール感覚の原点は、小平市内の練習場だった。04年に東京ユースからトップ昇格も公式戦出場ゼロ。居残り練習に付き合ってくれたのは、当時東京のコーチだった磐田の長沢暫定監督。「オレは(長沢)徹さんに育てられた。決めて申し訳ないけど、そんなことを言っていたら選手生命が終わってしまう」。成長を見せつけ、チームに勝ち点1をもたらした。

 見据える先は、常に日の丸の舞台。来月にはW杯最終予選、そしてコンフェデ杯が控える。放った矢は、果たして代表指揮官のハートに届いたのか?

 それが分かるのは5月下旬の代表メンバー発表だ。それまでに「あと5点決めたい」。まだまだ矢は持っている。【栗田成芳】