競泳男子で12年ロンドン五輪200メートル背泳ぎと400メートルメドレーリレー銀、100メートル背泳ぎ銅メダルの入江陵介(34=イトマン東進)が3日、現役引退を発表した。都内のホテルで会見に臨み、日本競泳界最多タイの五輪4大会出場などを振り返った。高校1年生から18年にわたって代表で活動。背泳ぎで09年に樹立した日本記録(100メートル=52秒24、200メートル=1分52秒51)も残る。長らく握ったバトンを次世代へ託した。

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実は11年前の23歳のとき、入江は引退を考えていた。13年8月の世界選手権(バルセロナ)。前年ロンドン五輪で銀メダルを取った200メートル背泳ぎで4位とメダルを逃した。取材エリアでは涙を流しながら「金メダルを取らないといけないと思って、ふたを開けると、取れない。期待に応えられない自分の弱さ」と自らを責め続けた。

確かにロンドン五輪では銀メダルだったが、目標はあくまで金メダルだった。憧れは04年アテネ、08年北京五輪で2冠を獲得した北島康介。世界一への渇望はだれよりも強かった。さらに当時、18歳だった萩野公介ら若手の突き上げも強烈だった。だから「表彰台の真ん中に立てない人間なのか。引き際を考えることも多い。今は五輪のことは考えられない」と引退を示唆した。

心機一転で臨んだ16年リオ五輪はメダルなし。リオ後もしばらく去就に悩みながら「自分には水泳しかない」と現役続行を決意。結局、21年東京五輪を含めて金メダルには縁がなかった。世界の頂点には届かなかったが、引退と背中合わせの中で金メダルを目指し続けた不屈の闘志は後輩たちへの最高の手本になるはずだ。【元水泳担当 田口潤】