【第158回】
難易度高いサルベージ
食道がんの集学的治療
食道がんのW期は、遠くのリンパ節や食道以外の臓器に転移、浸潤している状態で、いわゆる高度進行がんである。このうち気管支や大動脈などの重要臓器に浸潤した食道がんの治療法は−。
「多くの場合手術が困難ですから、化学・放射線療法が選択されます」と、食道がんの世界のリーダー、東海大学医学部付属病院(神奈川県伊勢原市)外科の幕内博康病院長(60)はいう。そして、続ける。
「化学・放射線療法が効いて手術が可能になる場合もありますし、まれにがんが消えてしまうこともあります。そこで最近はステージの早いがんにも化学・放射線療法が応用されるようになりました。しかし、がんが消えなかったり、再発してくる場合もあります。そこで、今、『サルベージ手術』が行われるようになってきました」。
注目のサルベージ手術とは、がんを根治する目的で化学・放射線療法を行ったにもかかわらず、がんが消えなかったり、再発した場合に最後の手段として行う手術である。実はこの手術、最高に難易度の高い手術。
「放射線を照射すると照射された臓器のその部分が線維化してガチガチになったり、癒着を起こしたりしてしまいます。その状態で残ったがんを完全に切除するのは大変難しいのです」。
もちろん、それだけではない。ほかに、化学・放射線治療後とあって患者の身体がかなり弱っているため、手術後に肺炎など合併症を起こすこともある。
化学・放射線療法が効かない患者さんにとっては大きな不利益となるため、効き目を予測する方法に関する研究がさかんに行われている。がん細胞そのものの遺伝子変化を指標に判断する方法や治療前と治療開始2週後のPET検査でのがん病巣の「生きの良さ」を比較する方法も将来期待されている。化学・放射線の効果がその患者さんにはあるのかないのか。それが分かれば、手術がいいか、化学・放射線療法がいいか対応もそれぞれ異なってくる。まさにオーダーメード医療の時代なのである。
▼PET検査 がんの最新検査。がん細胞は正常細胞の3〜8倍も多くブドウ糖を摂取する点を利用。ブドウ糖に信号を出す放射性物質ポジトロンを合成したFDGを体内に注入。30分安静後にPET装置で撮影すると、がん部分が分かる。
【ジャーナリスト 松井宏夫】
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