【アラカジュ(ブラジル)23日=木下淳】リオデジャネイロ五輪に出場する男子日本代表が、ブラジル北東部セルジッペ州の州都で直前合宿をスタートした。プレミアリーグのアーセナルとの移籍手続きを終えたFW浅野拓磨(21)が、経由地ロンドンから合流。当地で8月4日(日本時間5日)の1次リーグ初戦ナイジェリア戦(マナウス)に向けた暑熱対策を進め、メダル獲得と英国での労働許可証取得を目指す戦いを始める。

 大西洋からの海風が心地いい。浅野はスタジアムを黙々と走り、気温26度、湿度66%と少し涼しい中で積極的に汗を流した。「海外組」で迎えるリオ五輪。開幕を前にアーセナルとの移籍手続きを終え、吹っ切れた。経由地のサンパウロからアラカジュへの国内便では、機内が強く揺れても豪快に眠り続けた。気負いなく注目必至の大会に挑む。

 広島に別れを告げて18日に渡英し、ロンドンで身体検査や推定4年契約の完全移籍契約書へのサインを済ませた。五輪に集中する準備が整い「検査は問題なかったと思うし、クラブからも『五輪で頑張ってこい。楽しんでこい』と言われました」と背中を押された。

 アーセナルの本拠エミレーツ・スタジアムやクラブハウスも見学し「高ぶるものがあった」。ベンゲル監督にも一夜漬けで覚えた英語であいさつしたが「何やったかな…暗記したけど、もう忘れた」と思い出せなかった。最初は不安だったが「行ってみて、ワクワクの方が大きくなった。自分がどこまでやれるのか楽しみ。失う物は何もない」と前向きに活躍を思い描く。

 今は代表の一員として「クラブのことは考えない」と話すが、五輪でメダル獲得に貢献すれば、自分の道も切り開ける。欧州連合(EU)圏外選手がプレミアリーグに登録されるには、過去2年間のA代表の試合で原則75%以上の出場実績が必要。昨夏、国際Aマッチ初出場の浅野はまだ5試合で、現段階での労働許可証取得は微妙だ。英国のEU離脱も重なり条件が厳しさを増せば、他国に期限付き移籍する可能性が高い。

 一方、リオ五輪で「メダリスト」の肩書を得られれば、A代表の主力と同等レベルと判断される。特例ビザ発給の望みも出てくるという。「(ビザの)話はなかったし、今まで通り目の前の試合に集中したい」。最高峰リーグでプレーするため、五輪で結果を残す。