バスケットボールBリーグ1部(B1)のチャンピオンシップ(CS)が10日から始まる。東、中、西の各地区1、2位と、3位以下の上位2チーム合計8チームが、2戦先勝方式のトーナメントで頂点を争う。東地区1位宇都宮ブレックスのキーマンは、チーム在籍11年目のベテラン、渡邉裕規(わたなべ・ひろのり=36)。農業従事者でラジオのパーソナリティーでもある「三刀流」のムードメーカーが、チームを21-22年シーズン以来、3度目の頂点に導く。

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レギュラーシーズンが大詰めに入った4月のある朝。渡邉は宇都宮市内の畑にいた。収穫が一段落すると、ともに作業をしていた元Jリーガーの西澤代志也(にしざわ・よしや)さん(36)に声をかけた。「そろそろ練習行ってくるわ」。

身長180センチのポイントガード。3点シュートが武器で、3月30日の三河戦では7本打って、6本を沈めた。入り出したら手をつけられない“ゾーン”状態を、ファンは「ナベタイム」と呼び、同僚の田臥勇太、比江島慎らにひけをとらない人気を誇る。4月10日群馬戦では、比江島負傷交代の穴を埋める19得点を挙げ、チーム記録の21連勝に貢献。今季は全て途中出場ながら、2ケタ得点を7度マークしている。

そんなトッププレーヤーが、西澤さんら友人4人と農業プロジェクト「UTSUNOMIYA BASE」を立ち上げたのは、22年の3月だった。コロナ禍で世の中が一変した時、友人の栽培するトウモロコシ畑には以前と変わらない日常があった。「農」と「食」の価値にあらためて気づき、合計60アールの畑で農薬を使わず200種類以上の野菜をつくっている。

さらに「エフエム栃木 RADIO BERRY(レディオベリー)」のパーソナリティーという顔もある。毎週木曜午後9時から「ナベのくせに」という番組で30分間しゃべりまくる。14年9月にスタートし、一時中断を挟みながら10年近く続く人気番組だ。

渡邉 朝、畑に行って、昼間バスケの練習をして、夜はラジオなんてザラにあります。疲れますよ。でも死ぬ時に後悔したくない。やりたいことがあれば、できる時に這(は)いつくばってでもやった方がいい。

バスケットボールでは「エナジー(活力)」という言葉をよく使う。何事にも100%の渡邉は、宇都宮にそのエナジーをもたらす存在。地区優勝争いの最中の3月以降、出場時間を大幅に伸ばしたことが証明する。

「先を見ず、目の前のワンプレーにこだわる。結果はそのあと」。CSでも「ナベタイム」がさく裂すれば、3度目の頂点がぐっと近づく。【沢田啓太郎】

◆渡邉裕規(わたなべ・ひろのり)1988年(昭63)3月22日生まれ、神奈川県川崎市出身。世田谷学園-青学大-JBLパナソニックを経て、13年に栃木ブレックス(現宇都宮ブレックス)に加入した。11年ユニバーシアード日本代表。身長180センチ。ポジションはPG。