卓球女子シングルスで世界ランク8位の福原愛(27=ANA)は、初戦の3回戦で同58位モンテイロドデアン(ルーマニア)に4-0で勝利した。前日7日に右ふくらはぎをつるアクシデントで初戦敗退した石川佳純(23)の悔しさを背負う決意で臨み、わずか18分の圧勝発進。4大会連続出場の福原に、卓球界初となる個人メダル獲得の期待が託された。

 五輪本番で福原の強さが際だった。今春以降、格下相手に敗戦続きだったが、試合開始から鬼気迫る表情でスマッシュを連発。「入場前から心臓がドキドキ。これが五輪という特別な舞台。1カ月、限界を超えるまで練習をやってきたので、自信を持ってプレーすることができました」。第1ゲームは4-5から7連続得点。第4ゲームも11-1と、つけいる隙はない。前陣からの速い攻撃や左右のステップに、完全復活を予感させた。

 前夜の石川の試合は治療中にテレビで見た。気持ちのスイッチが入った。「1人のライバルとして(石川)佳純ちゃんがこの4年間に努力してきた姿を一番近くで見てきた。2人とも初戦で負けるわけにはいかない。絶対勝つんだと気持ちが、一層強くなりました」。2人で目指してきた金メダルだけに、悔しさも誰より理解できた。何度も携帯電話を手に取った。「何を送っても励ませない気がしちゃって…」。自分が結果を出す姿を見せることで激励に変えた。

 4回戦は苦手とするカット主戦型のリ・ミョンスン(北朝鮮)との対戦が決まった。順当なら準々決勝は12年ロンドン銅のフェン(シンガポール)、準決勝からは中国勢撃破に挑む。「準備はできています。ワクワク感がある」。卓球人生25年の集大成の気持ちで戦い抜く。【鎌田直秀】