山形にサッカー専用スタジアムを! 

 サッカー観戦の醍醐味(だいごみ)の1つに、スタジアムがある。担当しているモンテディオ山形のホーム、NDスタはトラック併設型だ。陸上競技場のため観客席からピッチが遠く、一体感に欠ける。一方、専用スタジアムはピッチと観客席が近いため、サポーターの歓声がダイレクトに伝わってくる。そこでJ1全18チームのスタジアムを分類してみると、専用スタジアムが半分以下の8しかなかった。

 ◆サッカー専用競技場(ラグビー兼用型も含む)

・鹿島(カシマ)

・浦和(埼玉)

・柏(柏)

・清水(アイスタ)

・仙台(ユアスタ)

・松本(松本)

・神戸(ノエスタ)

・鳥栖(ベアスタ)

 ◆陸上競技場

・山形(NDスタ)

・東京(味スタ)

・川崎F(等々力)

・横浜(日産ス)

・湘南(BMWス)

・甲府(中銀スタ)

・新潟(デンカS)

・名古屋(瑞穂陸)

・G大阪(万博)

・広島(Eスタ)

(球団名、スタジアム名)

 5月15日に、山形高橋節社長(65)が記者会見を行い、新スタジアム構想検討委員会が発足したことを発表した。7月25日には同委員会が主導となって、新スタジアムシンポジウムを行った。クラブライセンス事務局、スタジアム担当の佐藤仁司氏(57)が、約200人のサポーターの前でJリーグのスタジアムの現状や欧州の事例を説明した。

 新スタジアム建設に向けて確実に歩みは進めているが、クリアすべき課題は多い。13年に市川昭男山形市長が突如スタジアム誘致を表明し、NDスタのある天童市と対立した経緯がある。建設場所や、予算、スタジアムのコンセプトなど、つめるべき点は多岐にわたる。専用スタジアムはメリットばかりではない。サッカー以外の興行収入が入らず、他のイベントを消化しないと稼働日程がこなせない。試合開催日以外にも他の用途で有効に使える複合型スタジアムが望まれる。

 サッカーの本場、イングランドのプレミアリーグの本拠地は、ほとんどが専用スタジアムだ。昨年8月、当時マンチェスターユナイテッドに所属していた香川(現ドルトムント)のホーム開幕ゲームを観戦するために、約75000人を収容するオールドトラッフォードに足を踏み入れた。

 ピッチとスタジアムが一体となり、地鳴りのような応援がうねりを上げる。ナイスプレーには歓声を送り、ふがいないプレーや、味方のバックパスにすらブーイングする。おらが町のクラブを愛を持って応援する、まさにサッカーのあるべき姿だった。ピッチと観客席の距離感が、熱狂を生み出していると確信した。

 現在山形はJ2の6位から劇的なJ1昇格を果たしたのにもかかわらず、観客動員で伸び悩んでいる。10000人を割る試合もあり、年間順位同様に観客動員数も最下位だ。一朝一夕でクラブは強くならないし、観客動員も伸びない。中長期的なビジョンを確立し、クラブ、スタジアム、自治体三位一体となって地域密着策を模索する必要がある。その重要なピースの1つが、専用スタジアムだ。【高橋洋平】

 ◆高橋洋平(たかはし・ようへい)1981年8月3日、京都市生まれ札幌市育ち。04年に日刊スポーツ新聞社入社後は整理部2年半、販売局8年半を経て15年5月から東北総局。趣味は海外旅行。