かわいい子には旅をさせよ-。

 新年を迎え、オフシーズンだったJリーグも、各チームが始動する頃になりました。選手たちもそれぞれがオフ期間を過ごし、16年シーズンへ動きだします。

 仙台はオフ期間を使い、若手が武者修行に出掛けていました。昨年からクラブが始めた「スペイン修業」、オフ返上の短期留学です。スペイン南東部ムルシアの「ラマンガ・クラブ ハイパフォーマンスセンター」でトレーニングキャンプに参加しています。昨年はGKシュミット・ダニエル(23)とMF藤村慶太(22)の2人が、今年はFW西村拓真(19)が旅に出ました。

 期間は約1カ月。世界各国から集まった選手たちでチームを作り、専属の監督やコーチの指導を受けながら練習する仕組みになっています。同時期に欧州各国クラブや世代別代表チームなどがキャンプで集結するため、練習試合が多く組まれ貴重な経験を積めます。過去にはドルトムント(ドイツ)の日本代表MF香川や、FW本田もCSKAモスクワ(ロシア)在籍時にグラウンドを利用した場所。

 送り出した渡辺晋監督は「サッカーはもちろん、何もかもが刺激になるはず。普段、ここにいるだけでは感じられないものを得て欲しい」と話し、ひと皮むけて帰国するのを毎年楽しみに待っています。昨年参加したダニエルと藤村も、経験値をしっかりアップさせて戻ってきました。昨年15年シーズンは、シュミットは6月から期限付き移籍先の熊本で全試合フル出場するなど存在感を発揮。藤村は仙台で多くの試合にベンチ入りし、実のあるシーズンにつなげました。

 ただ今年は…? チーム内でも「天然すぎる」と言われる19歳の西村が、たった1人での参加。本人は「楽しみでわくわくします」とニコニコしていましたが、渡辺監督は「あいつ大丈夫かなぁ。飛行機の乗り継ぎとか、ちゃんと出来るのかな」なんて父親のように本気で心配されての出発でした。

 旅にアクシデントもつきもの。とは言いますが、無事に帰ってくることを願うばかり。西村は、富山第一高を2年生にして全国制覇へ導き、鳴り物入りで仙台へ入団したストライカー。14年限りで引退した元日本代表MF柳沢敦氏(現鹿島コーチ)の高校の後輩でもあります。期待を込め、クラブは柳沢が仙台入団時に付けていた背番号「30」を授け、期待をかけています。

 間もなく迎える新シーズン始動とキャンプイン。スペイン修業でたくましさを増したであろう西村は、プロ2年目の今季にJ1デビューと初ゴールを狙います。若手育成はチーム強化の鍵。仙台は少しずつ世代交代を図っている最中です。東北に本拠を置くチームとして山形出身が2人(DF菅井、DF渡部)、宮城育ちは6人(MF奥埜、GKダニエル、MF茂木、ユース昇格MF佐々木匠、同MF小島)と、徐々に地元の選手も増えています。

 東日本大震災から今年で5年目の節目の年。あらためて「復興のシンボル」になることを強く誓うベガルタ仙台は、今年も東北の地からJ1制覇を目指し挑戦を続けます。


 ◆成田光季(なりた・みつき)1989年(平元)5月6日、東京都練馬区生まれ。5歳から始めた体操競技歴は15年。中学、高校時代に日本一を5回経験。明大から12年に入社。整理部1年半を経て、13年から東北のアマチュアスポーツを中心に取材。15年から仙台担当。