<高校サッカー:ルーテル学院3-1帝京>◇1回戦◇30日◇国立

 2度目の出場となったルーテル学院(熊本)が開幕カードで過去6度の選手権優勝を誇る帝京(東京B)を3-1で破る金星を挙げた。今年4月に就任した小野秀二郎監督(37)のチーム改革で、目覚めたFW山本大貴主将(3年)が技ありのループシュートなど2得点で選手権初勝利に貢献。インターハイで2年連続4強入りした大津を下し、出場権を手にした実力を大舞台で見せつけた。

 FW山本の技ありシュート2発で勝負を決めた。1対1の同点で迎えた後半28分、ロングボールに追いつき帝京GKが飛び出したスキを見て勝ち越しのループシュート。同39分の2得点目も前に出たGKの動きを見定め30メートルの距離から決めた。この日朝、元イタリア代表のロベルト・バッジオのゴールシーンをホテルのテレビで見て、チャンスがあれば不意を突くシュートを試みようと決めていた。名門撃破に「勝ち越しできてうれしかった。国立にまた戻ってきたい」と笑みを見せた。

 活躍の裏には、01年7月から2年間、国際協力機構(JICA)で派遣されたスリランカでのサッカー指導歴を持つ小野監督の意識改革があった。4月の就任後「うまい選手はいたが、強い選手がいなかった」と振り返ったように、私生活のルーズさが、プレーにも表れていると感じ、あいさつ、話を聞く態度、授業態度、掃除などで約束ごとの順守を徹底させ、試合会場では便器磨きもさせたという。貧しい生活の中でも礼儀正しさを忘れず、たくましく生きるスリランカ人の姿に心打たれた。それが指導法にも生かされていた。

 イレブンは責任感や周囲への気配りを忘れなくなり、試合でも集中力を欠かさなくなった。山本も例外ではなかった。1、2年時は提出物を出さなかったり、授業中に居眠りしたりしていたが、監督の指導で改心。4月にコンバートされた不慣れなFWでの重責を果たすまでに成長していた。昨年は帝京を初戦で撃破した広島皆実が優勝している。ルーテル学院もそれだけの実力を大舞台で証明した。【菊川光一】