日本サッカー界の悲願、代表の専用基地が千葉・幕張に設立されることが13日、分かった。日本サッカー協会(JFA)が選定を進めていたフットボールセンター(仮称)の候補地が、幕張海浜公園に絞られた。今日14日のJFA理事会で報告される。ピッチ整備など、設備の設置費だけで約40億円が見込まれる一大プロジェクトが本格的に動きだす。これまで専用の練習場を持たなかった日本代表が、世界の強豪国のような拠点“虎の穴”から、一流国の仲間入りを目指す。

 日本代表の拠点が幕張になる。この日までバヒド・ハリルホジッチ監督(62)が28人の国内組を集めて1泊2日で行った合宿地のすぐ近く。プロ野球ロッテの本拠地QVCマリンもそびえ立つ広大な県立幕張海浜公園が、候補地として絞り込まれた。JFA側に土地の購入意思はないとみられる。千葉県側の大きな理解もあるようだ。

 代表強化に直結する専用活動拠点の設置はJFAの悲願だった。14年3月の理事会でも協議事項となった。その時に「JFA創立100周年を迎える2021年までに、代表チームのトレーニングやメディカルサポート、さらにはトップクラスの指導者や審判の養成、国際交流・国際貢献活動の拠点等の機能を有した『JFAフットボールセンター(仮称)』を都内近郊に整備することとしたい」(原文まま)と方針も明文化。その後、極秘裏に候補地選定が進められていた。

 これまで代表の活動は、国際親善試合を行う会場の近くで主に公共の競技場を借り、一般客と同宿となるホテルに宿泊して行ってきた。近年の代表人気の盛り上がりや海外でプレーする選手が増えたことで、制約が出て協会、選手が抱える負担も大きくなっていた。

 計画では天然芝ピッチ2面、人工芝1面に加え、選手専用の宿泊施設も設置したい意向。A代表に限らず、なでしこや男女の世代別代表などが、好きな時に好きなだけ強化活動に利用できる。さらに医療拠点、指導者や審判の育成と、まさに日本サッカーの“虎の穴”ともいえる拠点をイメージしプロジェクトを本格スタートさせる。

 日本サッカー界にはJヴィレッジ(福島=現在閉鎖中)、Jステップ(静岡)、Jグリーン堺(大阪・堺)といった大規模トレーニングセンターもあり、代表の活動にも利用されたことがある。ただ専用でなく一般も利用が可能。環境は申し分ないが、都内から遠いことも大きな問題だった。世界の強豪国は、ほぼ例外なくこの手の専用施設を持つ。今後は「幕張行き」が、日本代表入りを目指す選手のひとつの合言葉となる可能性もある。

 ハリルホジッチ監督の在任中に利用可能となるかどうかは極めて微妙だが、同監督は来日してすぐ「なぜ空港の近くに代表専用の練習拠点がないんだ?」と残念がっていたという。幕張なら、成田と羽田という日本の玄関、両空港へのアクセスも良好。W杯予選や国際試合への行き来のストレスも減る。ハリルも望む代表“虎の穴”、幕張が日本サッカーの中心になる。

 <強豪国の拠点>

 ◆イングランド代表(名称セントジョージズ・パーク) 12年に英国中部バートンアポントレントに完成。ロンドンから車で約2時間、近郊の3つの空港から車で約1時間の立地。フルコート11面、ホテル、メディカルセンターがある。オープン時にはウィリアム王子夫妻が立ち会った。

 ◆フランス代表(呼称クレールフォンテーヌ) 88年に完成し、98年W杯フランス大会では同国代表のキャンプ地になった。スタジアムがあり、屋内の人工芝ピッチも。併設のユースアカデミー出身者には元代表のアンリ、アネルカがいる。

 ◆イタリア代表(呼称コベルチャーノ) フィレンツェ郊外にある。58年に完成。丘の上の静かな環境にありピッチ4面と宿泊、研修施設完備。「カーサ・デッリ・アズーリ」(イタリア代表の家)とも呼ばれる。09年にはエスパニョール在籍時の中村俊輔(現横浜)が利用したことも。

 ◆スペイン代表(名称シウダ・デ・フットボール) 03年オープン。フルコート4面。近くには代表の歴史と栄誉を誇る博物館も。マドリード郊外にあり、バラハス国際空港から車で約30分と近い。設立を目指す日本がお手本にしている。