DF長友佑都(28)が1日、W杯ロシア大会アジア2次予選に臨む日本代表に合流した。移籍報道が多く飛び交った中、所属するセリエAインテルミラノ残留を明言。放出危機の間にトップ下やボランチなど複数ポジションを経験したことを前向きにとらえ、日本では不動の左サイドバックに還元する。

 もやが晴れた胸中を探られても、長友は淡々としていた。「いる場所で輝くよう努力するだけ」。いつものスタンスを最初は口にしたが、期待する答えを察したのか明言した。「残留する、ということで。チームに感謝し、しっかり貢献したい」。移籍騒動に終止符を打った。朝の帰国時も「精神的にキツい? 僕にその言葉はない。(報道で)勝手にチームが決まっていく状況を楽しんでました」と余裕の表情。欧州主要リーグの今夏移籍市場が閉じ、ようやく身が固まった。

 最終期限まで話題をにぎわせた。ガラタサライ(トルコ)サンプドリア、ジェノア(ともにイタリア)レバンテ(スペイン)レスター(イングランド)…。信ぴょう性があいまいな件も含め、候補が浮上しては消える状況が意味したのは、放出と背中合わせの不安定な立場。7月のインターナショナル・チャンピオン杯では3ボランチの右、左サイドバック、左サイドハーフを、たらい回し。8月の親善試合ではトップ下に放り込まれた。人数合わせ、とも見られなくもない起用だった。

 身も心も定まらない。不遇に耐えながら感じた。「前の選手がボールをどこに欲しいとか分かったし、いい経験。サイドバックに戻った時に生きる」。マンチーニ監督の評価も「(良い方に)変わってきている感じはある」と光は差し込んだ。便利屋の日々が、本職で飛躍する助走になった。

 気持ち新たに日本代表へ合流した。練習冒頭、MF香川とハリルホジッチ監督に呼ばれた。体調を問われると「問題ないです」と即答。サイドから崩す形を確認したとみられる非公開練習でも躍動し「僕たちの仕掛けが重要になってくる」とイメージを膨らませた。

 6月の初戦シンガポール戦は、前日練習後に左の臀部(でんぶ)の違和感を訴えて欠場。痛い引き分け(0-0)発進を見届けて責任を感じただけに、明日3日のカンボジア戦は「楽しみですね。自分らしいプレーを心掛けたい」。鬱憤(うっぷん)を燃料に左サイドで爆発する。【木下淳】