日本サッカー協会は14日、東京・文京区のJFAハウスで、U-23(23歳以下)日本代表のポルトガル遠征(21~30日)メンバー22人を発表し、オランダ2部ドルトレヒトに所属するDFファンウェルメスケルケン際(さい、21)を初招集した。オランダ人の父と日本人の母親を持つサイドバックが、リオデジャネイロ五輪の18人のメンバー入りに向けてアピールする。

 メンバー発表資料に、際立って長い名前があった。ファンウェルメスケルケン際。唯一の初招集となった21歳について、手倉森監督は「分析スタッフの寺門が調査していて、映像を見た時に興味がわいた。欧州にいるのでポルトガルに招集するチャンス。縁があると思った」と説明。本人はオランダの地で「一瞬で情報(ニュース)が拡散されますね。こんな経験、初めて。ありがたい限りです」と喜んだ。

 Jリーグを経由せずに海外へ渡った異色のサイドバック(SB)だ。甲府の下部組織で育ち、13年7月に父の母国へ。ドルトレヒトのセカンドチームで2シーズン、無給のアマチュア契約でプレーし、昨季終盤に当時1部だったトップチームに引き上げられた。15年5月のトウェンテ戦でオランダ1部デビュー。右SBでフル出場し、1カ月後にプロ契約を勝ち取った。

 日本では無名だが、負傷者が相次ぐ右SBの救世主としてテストされる。1月のアジア最終予選で活躍した室屋は左足ジョーンズ骨折の手術を2月20日に受けて全治約3カ月。1次予選のレギュラーだった松原も今月10日に右膝外側半月板の再手術を受け、同じく全治3カ月と危機的状況だ。

 その穴を埋める存在として、手倉森監督は「招集人数が18人になる本戦では、複数の位置をこなせることが重要。彼は左右のSBにボランチもこなせる。直近の試合では左サイドハーフで出ていた。ロングスローもある。我々になかったものを、もたらしてくれる」と期待。ファンウェルメスケルケンも「室屋選手と松原選手が負傷したと聞いていたので、チャンスがあるなら右SBかなと思っていた」と異国で燃えていた。

 U-23日本代表では広島浅野、新潟鈴木と並ぶ50メートル5秒9の快足で、高校までウイングとして活躍した。今は攻撃的SBとしてリオ五輪を目指し、こう話す。「ドルトレヒトで出場し続ければ、おのずと五輪が見えてくる。リオ、狙っています」。手倉森ジャパンの隠し玉が、初の欧州遠征でベールを脱ぐ。【木下淳】

<ファンウェルメスケルケン際(さい) アラカルト>

 ◆生まれ 1994年(平6)6月28日、オランダ・マーストリヒトでオランダ人の父と日本人の母の間に生まれる。2歳で帰国して山梨県北杜市で育った。

 ◆文武両道 中高一貫の進学校、甲陵中高に進む。国立大を狙える成績を残した。08年から13年までJ1甲府のU-15、U-18に所属し、片道1時間以上かけて練習場に通っていた。

 ◆実家は工房 ジュエリーデザイナーの父、服飾デザイナーの母が山梨の清里高原に洋品、ジュエリーや雑貨などの工房を構える。

 ◆成績 オランダ1部で通算1試合無得点。2部では15年11月27日のPSV2戦でプロ初ゴールを決めるなど、現在24試合1得点。

 ◆大学生 欧州サッカー連盟(UEFA)が提携するデンマークの通信制大学で、スポーツマネジメントなどを学ぶ。

 ◆サイズ、利き足 178センチ、72キロ。右利き。