日本代表バヒド・ハリルホジッチ監督(64)が“控えジャパン”で自身の去就を左右する、運命の10月のW杯アジア最終予選イラク戦(6日、埼玉)とオーストラリア戦(11日、メルボルン)に臨む。29日、東京・JFAハウスで代表26人を発表した。信頼を寄せる海外組が軒並み所属クラブで控えだが、それでも心中覚悟で招集。切り札としてフランス1部メッスでベンチ入りさえままならない、ベテランGK川島永嗣(33)を精神安定剤、盛り上げ役として加えた。

 メンバー発表会見は90分を超え、ロスタイム!? の90+2分で終了した。ハリルホジッチ監督がしゃべり出すと止まらないのはいつものこと。だが、笑える状況ではない。

 主力は、海外所属クラブで控えの苦境。本田は今季ACミランで公式戦2試合、計19分しかプレーしていない。直近5試合で、この日の会見の92分より短いプレー時間の選手は本田に川島、長友、香川、清武、岡崎、宇佐美と7人もいる。指揮官が「代表ではジョーカー」と期待を寄せる宇佐美はたった8分。結果次第で解任の可能性もある背水、土俵際の2試合。指揮官は“控えジャパン”に運命を託す決断を下した。

 実績と実力上位だが試合に出ていない海外組か、出ている国内組か-。ハリルのジャッジは、出ていない海外組だった。「私は私の選択をしたまで。彼らを外したら、他に誰がいるのか? 海外と日本のフットボールの差は歴然。川島、長友、吉田、長谷部、香川、清武、本田、岡崎、宇佐美、武藤。彼らをのけて、誰を呼びますか?」。

 9月の初戦UAE戦でまさかの黒星発進とつまずいた。同じ過ちを繰り返さないよう、手も打った。そのチョイスも控えから。過去のW杯日本代表で中山雅史、川口能活らが担った精神的支柱として、新天地メッスでベンチ入りさえ1度もない川島を呼んだ。フランス語で直接話ができ、選手からの人望もあるベテランを“精神安定剤”の「メンタルプレーヤー」に指名。「リーダーの1人。経験もある。彼の存在感が必要。プレーするかどうかは別問題。コミュニケーションと励ますところ。この2試合はメンタルが大事。そのためにエイジ(川島)を呼びます」とした。

 想定外のつまずきで去就問題もくすぶり続ける。進退についての質問を「私にはまだまだ、やるべきことがある」と受け流したが、続けられるかどうかは、信頼を寄せて呼び寄せた“控えジャパン”の奮起次第。「(招集は)『(試合に)出ていないが、信頼しているよ』のメッセージ。グラウンドで返答を待ちます」。初戦黒星は、過去のデータからW杯出場確率0%。どん底からの巻き返し。果たして、本田ら海外組主力の「返答」はいかに。【八反誠】