<W杯アジア3次予選:日本1-0バーレーン>◇22日◇2組◇埼玉

 日本代表DF内田篤人(20=鹿島)が「奇跡のラッキーゴール」で岡田ジャパンを3次予選逆転首位突破に導いた。バーレーン戦はドローなら2位止まりだったが、0-0で迎えた後半44分45秒に相手のクリアボールをヘッドではね返すと、高いバウンドでGKの頭を越え、決勝弾となった。20歳87日での代表初ゴールは、日本のW杯予選史上最年少得点。アウェーで敗れた相手のリベンジに辛うじて成功。日本サッカーのプライドを守り、最終予選に向かう。

 内田はわずかな可能性を信じて飛び上がった。ロスタイム突入まで残り約15秒。「GKと誰かがぶつかれば」。相手のクリアをヘッドで前線にはね返す。山なりのボールがGK手前でワンバウンドし、さらにFW巻が突進。GKとDFのお見合いを誘って決勝弾が生まれた。

 序盤にPKを外した中村俊が「狙ったのか?」と駆け寄る。格好良くないことは内田自身が自覚していた。「誰か来てくれてよかった。1人じゃ恥ずかしい」と、はにかんだ。

 代表初得点でも羞恥(しゅうち)心は最後まで消えなかった。「代表でゴールを決めずに終わる選手もいる中で記録に残ったけど…」。だが内田は知らなかった。日本のサッカー史上、20歳87日でのW杯予選初得点は中田英寿が持つ20歳151日の最年少記録を更新。そしてその記録が生まれたのも11年前の6月22日だった。

 昨年から3世代で代表入り。オフもなく、クラブ、代表の往復で疲れ果てていた。2月のW杯予選タイ戦の1カ月後にはタイでACLを戦ったが「2月の試合ってタイが相手だっけ?」。目の前の試合を戦うことで精いっぱいだった。

 だがこの1カ月での代表生活で心も洗われた。初めて中村俊と会話し「ピッチを離れてもサッカーの話ばかり。本当に好きなんですね」。この日の決勝弾は中村俊から教わっていたヘディングだった。

 バーレーン戦には苦い思いもあった。3月のアウェー戦は先発落ち。試合3日前の紅白戦で降格を察知した。「自分は小学生からずっと試合に出続けてきたけど、試合に出ない人の気持ちが初めて分かった」。初心に立ち返らせてくれた相手からの決勝弾。「オレじゃなく走ってくれた巻さんのゴール。チームが勝ったことが大事です」。W杯本大会へはまだ長い道のりが待っている。若きサイドバックはラッキーゴールに浮かれることはない。【広重竜太郎】