日本代表MF中村憲剛(28=川崎F)がこれまでの忠実な司令塔から、決断する司令塔に「チェンジ」する。28日のアジア杯最終予選対バーレーン戦で先発出場が濃厚なMF中村は、こうちゃく状態を打破できなかった20日のイエメン戦での反省をいかし、試合展開に応じて岡田監督にシステムやポジションの変更を進言する考えを示した。岡田監督が思い描くような局面を変えられる司令塔への1歩を踏み出す。

 実直な中村にとっては重い決断だった。練習後に慎重に言葉を選びながら言った。「まだ誰が試合に出るのかはわからない。ただ、この前のイエメン戦と同じ状況になったら、試合中でも監督に言ってみようと思う」。

 試合中でのシステム、ポジション変更は通常は監督権限だ。MF中村俊、遠藤らはあらかじめ岡田監督からポジションチェンジなどの判断を委ねられている。中村はこれまでの忠実な司令塔からの「チェンジ」に挑もうとしている。

 20日のイエメン戦で、中村はAマッチ30試合目で、初めてキャプテンマークをつけた。序盤で得点し、スムーズな立ち上がりも、そこから苦労した。極端にDFラインを下げ、守りを固めた相手を攻めあぐねた。後半に失点し状況は悪化。完全にこうちゃく状態に入り、中村はピッチ上で苦悩した。「このままではだめだとわかっていたが、システムの変更は選手個人では判断できない。どうすべきか悩んだ」。

 結局、岡田監督は「選手の中で打開してもらいたかったが…。途中でシステムを変更した」と、相手マークをずらすため中盤をダイヤモンド形に再編。その言葉を誰よりもかみしめたのも中村だった。「あの状況で(自発的に)何かをするとしたらぼくだったと思う」。監督が選手に求めているものを具体的に感じ始めていた。

 どうすべきかを自問自答し、たどりついたのが、自分が感じたことを監督に伝えるという結論だった。負傷者発生での中断時に、ピッチで感じた問題点、打開策を迷わず監督へ投げかける考えだ。25日の非公開練習直後、中村は監督と1対1で入念にポジション取りを確認。積極的にコミュニケーションをとっている。

 バーレーン戦ではDF中沢のキャプテンが濃厚も、中村は司令塔としてチームを動かす責任を負う。中村俊、遠藤はいない。代表実績では格上のボランチ稲本がいる中、「本当のキャプテンシー」を胸に、内容と結果が求められるピッチに立つ。【井上真】