【ユトレヒト(オランダ)7日】日本代表の岡田武史監督(52)が、チーム内の不協和音を静観する考えを示した。5日のオランダ戦での惨敗から、9日のガーナ戦へ向けて練習を再開。しかし、試合中のFKをめぐってMF中村俊輔(31)に対しMF本田圭佑(23)がキッカーを主張するなど、チームにはこれまでにない緊張感が満ちている。岡田監督はこの状態を把握しながらも選手たちの自主性に任せ、仲良し集団からの脱皮を待っている。

 岡田監督は予想していたようによどみなく、本田がチームへ与えた影響を説明した。「本田が入って悪くなったということはない。オレは試合のビデオを2回見た。本田が入った後半も、失点するまではちゃんと機能していた。点を入れられてから、がくっときた」。本田が流れを変えたという指摘を即座に否定した。

 さらに、後半のゴール前でのFKの場面で本田が中村俊、遠藤らにキッカーを志願した点についても、笑顔で言った。「言い合っていたという感じはしなかったよ。あの場面は3人が集まっていたから、オレも見ていて誰が蹴るのかなあ、と思っていた。FKは選手が決めるものだし、オレは指示はしない。オレに蹴らせろって言ってくるのは、どこの国もそうでしょ」。

 強烈な自己主張をする本田の存在を認めつつも、チームへの悪影響を否定した。これは、本田が時間をかけて岡田ジャパンにフィットしていく大切なプロセスと、最初から織り込み済みで招集しているからだ。これまでの岡田ジャパンは、チームコンセプトに忠実で、中村俊、遠藤、中村憲を中心としたまとまりが特徴だった。個性派の闘莉王もチームの和を乱すことはなかった。

 だが、オランダ戦での本田は明らかにプレッシングへの意欲に欠け、それが周囲へのしわ寄せとなった。それでも本田は主張を曲げず、それが主力組との距離を感じさせる事態に発展している。本田の理解者として食事時間には行動を共にするMF橋本は「たった1人の存在でチームが崩れるようなことではいけないと思う」と、チームとしてのタフさを求めている。

 岡田監督はこうした選手間の緊張感を感じながらも、選手たちが自主的に解決するのを待っている。それができればどんなに強い個性派も岡田ジャパンに融合できることになる。あと9カ月。岡田ジャパンが、いろんな個性派を飲み込み、そして、どう熟成されるか。岡田監督の戦略が試されている。【井上真】