<女子W杯:日本3-1スウェーデン>◇準決勝◇13日◇ドイツ・フランクフルト

 今大会初スタメンに抜てきされたFW川澄奈穂美(25=INAC)が、2得点と大車輪の活躍を見せた。佐々木則夫監督(53)の期待に応え、同点弾と試合を決める3点目を挙げた。所属するなでしこリーグのチームでは、主将兼ムードメーカーとしてメンバーをけん引。初優勝を目指すなでしこに、勢いのあるヒロインが現れた。

 初陣とは思えない働きだった。リラックスした表情でピッチに向かい、前線からのプレスをかけ続けた。先制を許した9分後の前半19分、MF宮間からのピンポイントクロスに、長身の相手DFにつぶされながら右足にボールをあてた。本人は、ゴールの認識が無いほど必死だった。「倒れて気付いたらみんながわーって寄ってきたので、(ゴールが)入ったんだと思った」。チームに活気をもたらす1発だった。

 きれいな放物線が、ゴールに吸い込まれた。現在、なでしこリーグ得点ランキング1位タイの6得点を挙げている決定力を、W杯でも見せつけた。後半19分、決勝進出を決定付ける3点目。MF宮間のクロスを相手GKがはじき、こぼれ球を拾って技ありのループシュートを決めた。今までの思いを振り払うゴールだった。「試合には出られていなかったけれど、自分はピッチの中で戦っているつもりでした。ピッチにいてもベンチにいてもチームのためにやっていた」。その気持ちが、活躍につながった。

 所属のINACでは、MF沢ら代表選手もいる中で主将を任されている。明るく人懐こい性格で、ムードメーカーも兼任。誰にでも笑顔で話しかけ、気遣いを欠かさない。チームメートを自宅に招き、得意の手料理を振る舞うこともあり、後輩選手からは「パスタも和食も洋食も何を作ってもおいしい」と大好評だ。

 代表チーム内でも、欠かすことのできないキャラクターだ。オシャレに敏感で、ピアスやネイルなど細かい部分にまで気を抜かない。DF熊谷と沢のネイルも担当し、自らのネイルは、ジャパンブルーと国旗、ボールや星のデザインを取り入れている。頂点を取るための準備も万端だ。「決勝トーナメントに入ってから(デザインは)変えていません。金のラメが入っています。シルバーは絶対に使いません!」と、笑顔で話した。

 もう気持ちは、決勝に向かっている。「がむしゃらに泥臭いプレーでやっても、1点取れて勝てれば勝ちに変わりはない。勝ちにこだわりたい」。なでしこの新星ヒロインは、まだ走りだしたばかりだ。