ロンドン五輪出場を決めたなでしこジャパンのDF鮫島彩(24)のユニホームが、“希望の光”となって福島の地で輝いている。鮫島は今年4月まで福島第1原発の技術部門で庶務のデスクワークをこなしていた。原発事故の影響で米女子プロサッカーのボストン・ブレーカーズに移籍したが、7月のドイツW杯で世界一に輝いた際に着用していた青と白のユニホーム2着を福島に贈っていた。第1原発の免震重要棟と、福島県庁知事室に掲げられているユニホームは、復興に奮闘する人々に勇気を与えている。

 福島県庁の知事室に入ると、すぐ目につくところに鮫島の白のユニホームが置かれている。「福島県民の皆さまへ

 応援ありがとうございました!!」と書かれたユニホームは、7月のW杯終了後に寄贈された。

 寄贈の際、鮫島は「今回、優勝できたのも福島県の皆さまの応援があってのことと思っており、福島県には大変お世話になりました。震災でご苦労されている福島県にせめて優勝のユニホームをお送りして、少しでも元気をだしていただければ幸いです」とメッセージを添え、丁寧に感謝の気持ちを伝えた。

 県庁職員は「とてもありがたかった。五輪出場も決まって、みんな喜んでいます」と、勇気の象徴として知事室に飾られていることを強調した。震災から約半年たった今でも、復興対応に追われる職員たちの気持ちを支えているという。

 鮫島が4月まで勤務していた東京電力福島第1原発の免震重要棟でも、7月末に寄贈された青のユニホームが掲げられている。8日に野田佳彦首相が福島第1原発を訪問した際、吉田昌郎所長が鮫島のユニホームを「守り神」と説明した。最前線で奮闘する所員たちに勇気を与えているという。

 東電時代に所属していたTEPCOマリーゼは震災以降活動停止となった。「国内のチームに移籍するのは心情的に難しかった」と米ボストン・ブレーカーズに移籍し、見事W杯優勝に貢献した。「諦めずに頑張っている姿を見せて、少しでも勇気づけることが出来れば」と被災地を思いやり、フィールドを縦横無尽に駆け回った。

 ロンドン五輪アジア最終予選、鮫島は初戦のタイ戦から8日の北朝鮮戦まで全4試合にフル出場した。来年7月の五輪出場を決め、なでしこジャパン不動のサイドバックのユニホームは、さらに輝きを増し、福島県民と原発事故作業員の心を照らし続ける。