<ロンドン五輪アジア最終予選:日本1-0中国>◇第5戦◇11日◇中国・済南オリンピック・スポーツセンター

 なでしこジャパンのFW丸山桂里奈(28=千葉)が、ロンドン五輪に向けた“初戦”でアピールに失敗した。国際サッカー連盟(FIFA)ランク4位の日本は、3大会連続五輪出場を決めた8日の北朝鮮戦から先発7人を入れ替えた布陣で、同15位の中国との最終戦に臨み、勝利を飾った。しかし、前日まで「絶好調」宣言していた丸山は、試合前の練習で右膝を負傷。後半32分から志願の途中出場も満足にプレーできず、試合終了前にピッチに倒れ込んだ。登録人数が20人から18人に減る五輪へのサバイバルレースにいきなり出遅れた。

 耐え切れず、尻もちをついて座り込んだ。試合終了の笛を聞く前に、丸山の今大会が終わった。白いテーピングで固めた右足の痛みに、立っていられなくなった。佐々木監督からは「無理するな」の声が飛んでいた。試合終了と同時に、MF沢らベンチにいた選手たちが一斉に丸山のもとへ。仲間にベンチコートをかけられ、手を貸されて立ち上がると、GK海堀に背負われ、憔悴(しょうすい)しきった表情で控室へ。そのまま済南市内の病院に直行して検査を受けた。

 試合前のアップで右膝をひねっていた。しかし、試合前とハーフタイムにドクターからチェックを受けると「いける」と即答。強行出場を志願した。だが、後半32分からピッチに立つと明らかに動きがおかしかった。相手DFに後ろから当たられると、簡単に腰が砕けた。後半ロスタイムに左サイドで3人をかわして左足でクロスを上げたが、このプレーで症状が悪化した。

 危機感を募らせていた。W杯ドイツ戦で決勝ゴールを決めて以降、無得点。アジア最終予選でも、出場は5日のオーストラリア戦での約10分のみ。出場すら与えられないもどかしさと、ロンドン五輪メンバー脱落への不安が共存していた。五輪予選期間中も「ロンドンのメンバーもどうなるか分からない。不完全燃焼続きなので、とにかく試合に使ってほしい。めっちゃ調子はいいんですよ」と訴えていた。

 その意味でも、この試合の重要性は限りなく大きかった。本大会は1年後だが、現時点でそれまでの試合予定は決まっていない。ましてや五輪で登録できる選手は20人から18人に減る。選考はさらに過酷になる。だからこそ、少ない機会に得点という結果を残す必要があった。「ドリブルで仕掛けてゴールを狙う」。だが、その強い思いもケガにはかなわなかった。

 同監督は「あまり出ていないので彼女の思いもあってプレーさせたが…。大事に至らなければいいがと心配している」と後悔しながら思いやった。貴重なアピール機会に、最悪の結果が待っていたなでしこの“宣伝部長”。ケガの程度は不明だが、3度目の五輪出場をかけた道のりは、険しさを増すことになった。【鎌田直秀】