<ロンドン五輪アジア最終予選:日本2-1シリア>◇27日◇国立

 また決めた!

 大津だ!

 U-22(22歳以下)日本代表がロンドン五輪アジア最終予選ホーム・シリア戦に臨み、勝利した。1-1で迎えた後半41分、FW大津祐樹(21=ボルシアMG)が、ド派手なダイビングヘッドで決勝ゴールを決めた。関塚ジャパン期待の新星の2戦連続ゴールで、日本は3連勝。勝ち点9でC組首位に立ち、5大会連続の五輪出場に前進した。これで年内の予選は終了し、来年2月に再開する。

 聖地が揺れた。国立が、地鳴りのような大歓声に包まれた。後半41分。DF比嘉が左サイドを駆け上がり、クロスを上げる。この瞬間、逆サイドにいた大津が、マークを振り切り、ゴールに向かって走りだした。目の前に、ゴールの右ポストが立ちはだかる。構わずダイビング。ドンピシャでとらえたボールは、豪快にネットを揺らした。終了間際の値千金の決勝弾。仲間と熱い抱擁を交わした。

 あざす!

 熱気が冷めない試合後の国立にこだました、大津の第一声。甘いマスクに、茶色の長髪。左耳には銀色のピアスが輝く。またも「チャラ男」の独り舞台だ。「比嘉からいいボールが来るのは、練習から分かっていた。結果を出すことにこだわってたんで、流れを変えられたのは良かった」。前回のバーレーン戦(22日)でも、前半終了間際に右足で先制ゴール。かっこよすぎる男が、またも日本を救った。

 関塚ジャパンの五輪予選では、初の海外クラブからの招集。五輪予選への招集は拘束力がないが、クラブが理解を示した。「ゴールへの意識は、ドイツに行って成長できた。向こうのレベルは相当高い。貪欲さがないと、やっていけない」。クラブへの感謝の気持ちも込め、ドイツで得た力を発揮した。

 7月5日。クラブのメディカルチェックなどを受けるため、成田空港を出国する時だった。カメラマンが飛行機をバックにポーズを取るよう要求すると、大津は「まだ何も決まってないですから」と断った。目標とする海外でのプレーが現実となりつつあり、浮足立っても不思議ではないが、自分の立場をしっかり把握していた。あれから4カ月。10月22日のホッフェンハイム戦でブンデスデビューも果たし、日の丸戦士としても結果を出した。

 今夏まで在籍した柏が、リーグ初優勝に王手をかけている。古巣でのラストゲームとなった7月23日の鹿島戦も、この国立だった。涙でサポーターに別れを告げた場所。「いい思い出のある場所なんで、本当にうれしいです」。前日26日には、ホテルで柏の試合をテレビ観戦。同点ゴールの瞬間は、うれしさのあまり同部屋のDF酒井宏(柏)と抱き合っていた。

 これで日本は、今予選3連勝。勝ち点で並んでいた宿敵シリアを破り、首位に立った。次は来年2月5日に、今度はアウェーでシリアに挑む。「勝つことだけを考えてたんで、今日は大きい勝利。このパフォーマンスを続けていきたい」と大津。今日28日には、再びドイツへ出国する。ロンドン五輪に向けて欠かせない存在となった新星は、さらに強くなって帰ってくる。【由本裕貴】