五輪開幕1カ月前の、異例のアウェー前哨戦だ。なでしこジャパンが6月12日から約2週間、スウェーデン遠征を行うことが10日、分かった。7月に開幕するロンドン五輪の決勝トーナメントを見据え、FIFA(国際サッカー連盟)ランク5位スウェーデン、同6位フランス、同8位イングランドのうち、1次リーグで同組にならない2カ国と強化試合を行う。4月24日の組み合わせ抽選会後に正式決定する。4月には国内で同1位米国(1日)、同4位ブラジル(5日)との試合も予定。世界トップ10との過酷な連戦を、悲願の金メダルにつなげる。

 なでしこジャパンが世界トップ10との「プレ決勝トーナメント」を、ロンドン五輪の金ロードにする。かねて希望していた欧州遠征が6月12日から北欧スウェーデンで実現することになった。ドイツやフランスで約2週間の予定で検討を続けてきたが、このほどスウェーデン協会から現地での対戦オファーが届いたことで、遠征先を決めた。

 五輪開幕1カ月前の異例の欧州遠征は、日本にとってアウェーの戦いとなる本大会の、特に決勝トーナメントを見据えた予行演習が狙いだった。「英国と同じ欧州の雰囲気を味わわせて、かつアウェーで強豪国と試合がしたかった」と日本協会幹部は明かす。佐々木則夫監督も「W杯に出場する国と五輪前に試合ができたら申し分ない」と希望していた。

 その要望通り、遠征での強化試合も世界トップ10の強豪国が内定した。昨季の欧州女子チャンピオンズリーグを制したリヨン(フランス)の長身FWシェリン擁するスウェーデン、高い技術を誇る昨年のW杯4強のフランス、そして、五輪のホスト国で、速さと高さを兼備し、W杯で日本のパスサッカーを封じたイングランドのメダル候補3カ国に対戦を打診し、承諾を得た。「3カ国のうち、(五輪1次リーグで)対戦しない2つとやる」と日本協会幹部。4月24日のロンドンでの組み合わせ抽選で、同組にならなかった2カ国と対戦する。

 昨年のW杯優勝の効果は想像以上だった。それまでは欧米の強豪国と試合を組むことが困難だった。08年の北京五輪前の強化試合は世界9位のカナダが欧米勢の最高位。それが、今回は世界各国からオファーが届き、日本の対戦希望を快く承諾してもらえるようになった。そのメリットをロンドン五輪への強化に最大限に生かした。あえて厳しいアウェーでの強化試合を増やし、対戦国も世界トップ10にこだわった。金メダルへ精神面も技術面もさらに向上を目指す。

 今月29日開幕のアルガルベ杯(ポルトガル)出場も決定している。W杯決勝の再戦となる米国だけでなく、FIFAランクがともに12位で身体能力の高いノルウェー、デンマークなどと4試合をこなす。4月1日には米国、5日はブラジルとの国際親善試合も日本で開催される。少なくとも世界上位と9試合もできることは極めて異例だ。

 アルガルベ杯、国際親善試合、スウェーデン遠征はいずれも女子の国際Aマッチデーに指定されているため、海外組の招集にも障害はない。五輪直前まで続く強豪国との連戦は、対戦相手に研究の機会を与えたり、連敗すると自信を失うデメリットもある。それでも過酷で豪華な強化日程は、五輪で金メダルを獲得する底力になる。

 ◆なでしこジャパンの08年五輪前の試合

 東アジア選手権、アジア杯が組まれていたため、海外の強豪と対戦する機会は少なかった。11勝3敗と好成績を収めたが、世界ランク10位以内の強豪で対戦できたのは6位の北朝鮮、9位のカナダだけ。