<W杯アジア最終予選:日本3-0オマーン>◇3日◇埼玉

 日本が本田のゴールで、W杯アジア最終予選を白星発進した。日本代表(FIFAランク30位)はホーム埼玉スタジアムでオマーン代表(同92位)と対戦。前半11分にMF本田圭佑(25=CSKAモスクワ)のボレーで先制。背番号4を背負うエースの、国際Aマッチでは11年8月10日韓国戦(札幌ドーム)以来となるゴールを呼び水に3-0で大勝した。予選を勝ち抜いた過去3度のW杯と同じ最終予選初戦の白星。14年W杯ブラジル大会に向け最高のスタートを切った。

 オレを見ろ-。本田が雄たけびをあげた。月夜の埼玉。W杯最終予選初戦の重い雰囲気を背番号4が変えた。6万人超のスタジアムをひと蹴りで沸騰させた。

 「何より初戦は、結果が重要なんで。長い間点を取ってなかったんで狙っていた。狙い通りでした」

 前半11分。DF長友のクロスを手を挙げて呼び込み、左足をダイレクトで合わせた。相手DFの股を抜く一撃で、名手ハブシが守るゴールを破った。すぐに左胸の日の丸に口づけし、両手で背中の「HONDA」と「4」を誇示。念を押すように、右胸の背番号4を指し示した。

 これぞ本田だ。度重なるけがが癒え、9カ月ぶりに代表に戻った5月中旬に「復帰というと前に戻る感じ」と“復帰”の2文字を否定した。背番号は「初めて点の取れる4番が生まれるんです」と、前線の選手では異例の4を選んだ。理由を説明する言葉はもういらない。そこにいたのはトップ下で攻撃を指揮し、点の取れる新たな4番だった。

 けがも、進化を阻害する要因にはならなかった。シュートの際に踏ん張った軸足の右膝には昨年9月にメスを入れた。スペインでの手術で半月板を切除。切除したのは一部だったが「オレの半月板はない」と口にするようになった。完璧にミートした左足の太ももは、3月に強度の打撲を負った。骨に近い深い筋層に細かい傷が入り、復帰まで約1カ月半を要した。

 けがの間、代表からも遠ざかりピッチにも立てずリハビリの日々。家族と専属トレーナー以外、ほとんど日本語も通じない異国モスクワ。自分と向き合う時間は長かったが、成り上がる、という信念は一切ブレなかった。「メンタルと意志があれば、オレは世界一になれる。今までさんざんメンタル、メンタルと言ってきたけど、けがをしてそうだと確信した」。進化する姿を思い描き、信じた道を歩んできた。

 「なくなった」半月板、傷を負った左太もも、ピッチから離れたブランク、そのすべてを自分をかき立てる材料にした。公言する世界一へ、自身と日本を引っ張り上げる動機に変えた。

 もちろん、この1勝で満足などしない。終了後の表情は、不満げ。「まだまだこのチームはこんなもんじゃない。(自分の)性格上、勝てればOKではない。アウェーでやるときに『もうやりたくない』と思わせるくらい、こてんぱんにできたと思うので」。長いW杯最終予選の幕開けを飾るゴール。本田が開いた扉は2年後のブラジルの頂点への入り口だ。【八反誠】