<親善試合スウェーデン招待:日本1-4米国>◇18日◇ハルムスタード

 なでしこジャパンのエース、MF沢穂希(33=INAC神戸)が帰ってきた。米国戦にボランチで先発出場し、良性発作性頭位めまい症で離脱してから110日ぶりに代表のピッチに立った。日本(FIFAランク3位)はパワーとスピードで勝る米国(同1位)に、FW永里優季(24=ポツダム)の1点のみで完敗。後半12分までプレーした沢にとって、それでも五輪に向けて手応えをつかんだ一戦となった。

 背番号「10」が、後半12分まで全力疾走した。沢はロンドン五輪用で初めて着用する白い代表ユニホームをまとい、確かな1歩を踏み出した。

 前半2分、猛然と相手MFヒースに襲いかかり右足でボールを奪う。ファーストタッチで持ち味の危険察知能力を見せつけた。ライバルFWワンバックも先発出場し、心をヒートアップさせた。「得点を狙います」の宣言通り、ボランチ位置から積極的に前に出た。

 もちろん簡単な相手でないことは承知している。屈強な米国の前線からのチェックに苦しんだ。中盤でボールを失いカウンター。「久しぶりの代表だったのにふがいない。後半はボールを奪ってパスをつなぐことができた部分もあったけど、苦しいときこそ自分や阪口が立て直せないとダメ」と反省した。

 自身にとってW杯決勝以来となる米国との再戦は、1-4と久しぶりの大敗。「やっぱり米国はいつ戦っても威圧感がある。戦い方もパスをつなぐのではなく、日本を倒すために研究し直し、身体能力を生かすサッカーに戻してきた」と強さを肌で感じた。

 日本にいる兄典郷さんにも、代表復帰の姿をみせられた。5月19日に沢のもとに届いた兄からの結婚の知らせ。沢は自分のこと以上に喜び、代表復帰へのモチベーションを高めた。10年以上も交際していた2人に「本当におめでとう。結婚するの遅すぎるくらいだよ」とメールで祝福した。次は代表復帰初ゴールをプレゼントすることも誓った。兄はこの日の妹の姿に「W杯のころに比べたらまだまだ100%じゃない。五輪まで焦らず頑張ってほしい」とエールを送った。

 沢が1歩前進したことは確かだ。「体調はまだまだだけど、スウェーデン戦もキリンチャレンジ杯(7月11日、オーストラリア)もあるし、フランス戦(同19日)もある。ロンドンまであと1カ月くらいはある。結果を残すことだけ。そこでベストに持っていきたい。自分もチームも大丈夫だと思うし、やらないと」。

 佐々木監督も「何シーンかはニュートラルなポジションでボール奪えた。まだまだ戸惑いもあるだろうけど大丈夫でしょう」と合格点を与えた。久しぶりの激戦で、打撲している右太ももも少し痛かった。だが、沢の表情はトップレベルの国際舞台に戻ってきた喜びに満ちていた。【鎌田直秀】