<国際親善試合・キリンチャレンジ杯:日本1-1ベネズエラ>◇15日◇札幌ドーム

 「マンU香川」の日本代表初勝利は持ち越した。マンチェスターUの日本代表FW香川真司(23)が、入団後初めての凱旋(がいせん)試合に先発出場したが、不発に終わった。W杯予選や名門クラブでの定位置争いで続く緊張感を取り戻せず、決定的チャンスを決めきれなかった。20日のイングランド・プレミアリーグ開幕を目前に控え、香川にとっても日本にとっても消化不良の試合を「いい薬」にする。

 何度も何度も、札幌ドームの屋根を見上げた。ゴールに嫌われた香川は、枠をとらえることができなかった。「求められている中で、結果を残せなかったのが悔しい」というのが不発の心境。「攻撃の方でイメージが湧かなかった。攻撃のスイッチが入っていない」。期待の大きさを知っているから、反省が口を突く。香川の心が晴れることは、なかった。

 特別悔やまれるシーンは2つ。後半17分、1度前を向いたがやり直そうと後ろに運ぼうとしたボールをかっさらわれた。失点のきっかけをつくり「イージーなミス。日本代表というところでやってはいけない」。それでもミスした分は取り返すつもりだった。同30分に、DF駒野の高速右クロスに対して、逆サイドから走り込んだ。左足で放ったボールは、無人のゴールをわずかにそれて、バーの上をかすめていった。

 マンチェスターU入団後、日本で初めての試合となった一戦。それは、W杯予選とも、ここ1カ月激しい定位置争いを過ごしたマンUとも、少し違った。「90分通して『親善試合』の流れになってしまった。雰囲気がピリッとしないというか。次につながるゲームにならなかった」。消化不良の試合に納得できなかった。

 サッカーファンならずとも知る超名門クラブに助っ人外国人として加入。始動とともに世界ツアーに同行した。南アフリカ、中国、北欧、ドイツ、そして日本。転戦の移動距離は、世界1周分に及ぶ。それでも「疲れはない。相手は南米から来てるんだから、絶対に勝たないといけなかった。その中でも自分のプレーができないようじゃ、まだまだダメ」。言い訳には絶対にしないが、過酷な状況であることには変わりない。

 中4日で迎えるイングランド・プレミアリーグ。開幕先発を狙う香川は「戦いは激しいが、結果を残せる自信はつかんでいる」と前を向く。「代表でもクラブでも両方で力を発揮する」。顔をしかめ続けた試合を開幕直前の苦い良薬にして、再び赤いユニホームに袖を通す。【栗田成芳】