<国際親善試合:日本2-1カナダ>◇22日◇カタール・ドーハ

 【ドーハ23日】トップ下に入った日本代表FW香川真司(24=マンチェスターU)が消化不良で終えた。カナダとの親善試合で、前半はトップ下でプレー。コンディション不良のFW本田に代わっての起用も、司令塔としてリズムを生み出せなかった。後半は代表での定位置である左サイドに戻り、前半のみで「トップ下起用テスト」は終了。チームはFW岡崎慎司(26=シュツットガルト)とFWハーフナー・マイク(25=フィテッセ)のゴールで2-1と勝利を収めたものの、W杯をかけたアジア最終予選ヨルダン戦(26日、アンマン)に課題を残した。

 納得できなかった。できるはずがなかった。香川は前半、トップ下に起用されながら、カナダに脅威を与えられなかった。FIFAランク68位で、すでにW杯への道を断たれている若手中心の格下を相手に、手応えどころか消化不良に終わった。試合直後、達成感とはほど遠い感情を抑えるように、言った。

 「課題が出た。そういう試合。内容的によくない。前半のままいったら、ヨルダン戦は厳しい。それ(トップ下の手応え)はないでしょ」

 12年2月29日のウズベキスタン戦以来、代表では2度目の先発司令塔として与えられた45分間。最後までリズムをつくれなかった。攻撃陣1人1人の距離が遠く、連係を生み出すことができなかった。真ん中でプレーしたいのに、左のFW乾は遠くにいた。近寄っていけば、1トップの前田が孤立してしまった。「チャンスでボールを引き出して、形をつくることが大事。チームとして難しかった」。推進力を生み出せなかった要因は、香川1人だけではない。だが、それでも流れを引き寄せるのが、司令塔の役割でもある。打開しようと、悪循環のはざまでもがいていた。

 トップ下として唯一輝いた瞬間は、前半9分のカウンター。MF長谷部からのスルーパスに裏へ抜け出して、こぼれ球を誘いFW岡崎の先制点が生まれた。前を向けば力を発揮する。一方で後半、従来通りの左サイドに戻ると、チームは落ち着きを取り戻した。同3分には中央に進入してボールを受けると、FWハーフナーにスルーパス。決定機を演出した。「後半の方が形としてつくれた。前半からやっていければよかった。前半からできると思う」。前後半で明暗を分けた。

 本田不在の影響は少なからず浮き彫りになった。これまで本田を中心に配置された日本の攻撃陣は、自然と距離感が体に染みついていた。ほぼメンバーと定位置を固定してきた半面、柔軟な対応は難しい。「形にこだわりすぎてしまった。監督の目指すサッカーを浸透しようと考える。それが日本人のいいとこでもあり、悪いとこでもある。もっと試合の流れを読んで、やっていかないといけない」。香川をもってしても自己流のトップ下を見せようにも、45分でつかみきれなかったことは明白だった。

 W杯出場をかけたヨルダン戦まで中3日。時間は限られている。「もう1回、気を引き締めていかないといけない。次もこうなるかもしれないけど、切り替えていく」。勝てば決まる大事な一戦。だが、トップ下に香川はいないかもしれない。【栗田成芳】