古傷の左足首などの治療で帰国している日本代表MF本田圭佑(26=CSKAモスクワ)が15日、報道陣シャットアウトの厳戒態勢の中、異例の紅白戦に出場した。本田の調整のためだけに、国内の練習場に学生が集められ、特別試合が開催された。本田も学生に交じり約40分間プレー。気持ち良さそうに走り、汗をかいた。本田の回復に全精力を注ぐ日本協会の全面バックアップもあり、本田の左足首は復調しつつある。

 本田がまた1歩、復帰へ向けて前進した。いずれも黒のフード付き半袖ウエア、短パン、ストッキングを身につけた本田は、学生たちが紅白戦の準備を整えると、おもむろに緑色の「背番9」のビブスを着用。しっかりと試合前の整列に加わった。

 練習場への入り口には、がっちりとカギがかけられ、ピッチへ入るための正門も閉められた。さらにその内側にフィールドが見えないようにするための仕切りまで立てられるという厳戒態勢の中、本田は約40分間、快適な陽気の中、気持ちの良い汗を流した。

 この日は紅白戦前にもボールを使った練習や、短い距離のダッシュを繰り返した。さらに本田は試合後も疲れを見せずに、再び体を動かした。戦列復帰に向けたリハビリ・調整は順調そのもので、ロシアに戻る日も近いことをうかがわせた。

 この紅白戦は、本田への期待の大きさを示す、日本協会による異例の待遇だ。これまで協会スタッフがつきっきりでトレーニングを行ってきたが、この日は本田1人のために、20人を超える学生がバスに乗って練習場にやってきた。少しでも早く実戦感覚を取り戻してほしいという配慮の表れで、本田本人もそれに応えるべく、トレードマークの金髪を風になびかせながら、必死の表情でボールを追った。

 日本代表に加え、21日にスパルタク・モスクワ戦、28日にはルビン戦を控えるCSKAモスクワでも本田を待ち望む声は日に日に高まっている。スルツキー監督は12日のディナモ・モスクワ戦後に「モスクワへは4月18日に戻ってくる。我々は彼がすぐに全体練習に入れることを強く願っている」と熱望。現在、チームは2位ゼニトに勝ち点6差をつけ首位を走っており、本田の復帰で優勝へ向けてラストスパートをかけたいところだ。

 代表での同僚、インテルミラノ長友が戦列復帰戦となったアウェーのカリャリ戦に途中出場。ところが再び足を負傷して、途中交代を余儀なくされてしまった。当然、代表復帰へのプランは白紙。長友の負傷は、日本代表にとっては頭の痛いニュースとなった。

 そんな暗い知らせを吹き飛ばせるのは本田の回復以外にない。協会で本田について聞かれた原博実強化担当技術委員長は「順調だと聞いている。もうすぐモスクワに戻る?

 そうなるんじゃないかな」と話した。暖かい春の日差しのもと、試合に練習にとスプリントを繰り返す本田の姿は、まさに日本代表の希望といえるものだった。<一昨年からの本田の故障経過>

 ◆手術

 11年8月のロシアリーグで右膝を痛め交代。9月1日にスペイン・バルセロナで手術を受けた。

 ◆再離脱

 同11月18日にロシアリーグで復帰。90分プレーしたが、痛みが出て再離脱。

 ◆CL欠場

 12年3月3日のリーグ戦に先発復帰したが左太ももを打撲。同3月14日の欧州CL決勝T、Rマドリードとの第2戦は監督に欠場を申し入れた。

 ◆復活

 同5月23日の日本対アゼルバイジャンで復活。全2点を演出。

 ◆合宿離脱

 今年2月中旬にスペインで2次合宿を行っていた所属クラブを離れ、右膝の定期検査などのためにバルセロナへ。

 ◆リーグ再開戦は欠場

 3月9日のリーグ再開クリリア戦は調整遅れで欠場。ロシアでは体調不良との報道も。

 ◆代表メンバー外

 W杯アジア最終予選ヨルダン戦(3月26日)に向けたメンバー発表は体調が万全でないため選出されなかった。

 ◆緊急帰国

 3月26日に成田空港着の航空機で帰国。CSKAモスクワの許可を得て、異例の日本での治療、リハビリに入った。