<アジア杯:日本2-0ヨルダン>◇1次リーグD組◇20日◇メルボルン

 日本がアジア杯では初の1次リーグ3試合連続無失点で、23日の準々決勝UAE戦に進んだ。立役者はフル出場したセンターバックのDF森重真人(27=東京)。前半38分、ハイボールを競り合った際に相手DFの後頭部に顔面を強打して一時ピッチを離れたが、フル出場。コンビを組むDF吉田もうなるほどの不屈の闘魂を見せた。

 戦いの爪痕が、顔面に残されていた。試合後の取材ゾーン。森重の口の周りは完全に腫れ、赤くにじんでいた。まともに口も開けられない様子に「大丈夫?」と問われると、目を閉じて首を横に振った。「お疲れっす」と唯一言った言葉も、うまくろれつが回らない。戦いを終え、すべての力を出し尽くしたように、移動バスへ乗り込んだ。

 ピッチに立ち続け、戦い抜いた90分間。ピッチから去ったのは1度だけ。前半38分の、競り合いの場面だった。ハイボールで相手選手と競り合い。ボールを見ずに突進してきた相手の後頭部にぶつけた顔面は、一瞬形が変わるほどの強打だった。倒れ込み、口から流血。しばらく動けずタンカで外に運ばれたが、不屈の闘志で森重は戻った。

 後半開始わずか10秒でロングボールを放り込み、岡崎のビッグチャンスを生んだ。後半27分には危険な縦パスをスライディングでクリア。終了間際の左クロスにも対応した。センターバックを組む吉田は隣で守り、異変に気づきながらも守りきる森重の姿に脱帽し、代弁するように言った。

 吉田

 口から血が出ていたから大丈夫かなと。顔色もあまりよくなくて心配しました。(コーチングが)ちょっとおとなしくなったけど、みんなでカバーできたと思う。たぶん日本のDFの中で、一番タフな選手だと思います。

 勝たなければ1次リーグ敗退が決まるヨルダンの攻勢をはねのけ、日本のアジア杯史上初めて1次リーグ3試合連続の無失点。270分間ゴール割らせない要因を、吉田が明かす。

 吉田

 前線でボールを取られた後の切り替えの早さが素晴らしい。試合ごとによくなっているけど(決勝まで6試合のうち)まだ半分。これから苦しくなることもあるかもしれない。自分たちが何をやるべきかは分かっている。一言二言、声を掛けるだけで今はうまくやれる。

 無失点が守備にとって唯一であり最大の勲章。ゼロを積み重ねた分だけ、日本の連覇が近づいてくる。【栗田成芳】